MITメディアラボの環境から学んだ
オリンパスの研究開発のメンバーが、MITメディアラボに参加したのは2011年10月。エンジニアだけではなく、アーチストまで参加する自由な環境に当初は驚いたという。
あえてリスクのあるプロジェクトを選び、戦略を出してどんどん突き進むという伊藤穰一所長の考え方は、弊社の研究開発の姿勢とは異なったものでしたが、そこに可能性を感じました。(オリンパス 石井氏)
以後、MITの学生やメディアラボの研究者との交流をおこない、コンセプトをつめていった。商品化したのが2015年の3月だ。ラボへの参加から商品化までに3年半を要している。「道のりは決して平坦ではなかった」と石井氏は言う。最初のマイルストーンになったのは、2012年の5月、未来のカメラについての議論を、メディアラボの40名ほどの研究者とおこなったことだ。
みんなが スマホを持ってしまったら、カメラなんか必要ないじゃないか。そんな率直な意見から議論をしました。その中から生まれたのが、“オープンプラットフォームカメラ(OPC)”というコンセプトでした。
「オープンプラットフォームカメラ」とは、必要最小限の撮像モジュールを中心にして、マイクロフォーサーズのすべてのレンズと合体できるというもの。この撮像モジュールをコントロールする部分は、iPhone、Android、グーグルグラスなどの無線通信デバイスとなる。そのデバイスで動くアプリケーションもオリンパスだけではなく、社外の人も作れるようにするというものだ。「カメラのオープン化というアイデアそのものは、新しいものではなかった」と石井氏はいう。スタンフォード大学のMark Levoy教授は、「フランケン・カメラ」というプロジェクトを進めていた。石井氏はスマホ時代のカメラとして、そのアイデアにさらに磨きをかけようと考えた。
これが3年前の提案資料です。無線通信のところでまず切り分ける。オリンパスは左側に注力し、高画質撮影ができるハードウェアに注力する。必要最小限のものを出しましょうというアイデアです。
しかし、この資料を発表した時の社内からの批評は散々なものだった。