星野リゾートが行ってきたアジャイル経営
講演の最後に質疑応答が行われた。「アジャイル経営において大事である、間違った方針から方向転換の具体例はあるか」との問いに対し星野氏はトラベル・エージェントを絞った経験を語った。星野リゾートで集客にITを活用した当初、可能な限り多くのエージェントと契約を進めていたという。エージェントに任せるといっても共同で集客施策を考えなければならないため、エージェント数を増やすことで、自社チャネルの開発に人員を割けなくなってしまい、集客効果が薄れてしまったそうだ。この失敗から、契約エージェント数を星野リゾートのブランドごとに1社に絞り、その1社と深い関係を築くよう方針を変えた。この方針転換により、結果的に自社チャネルを通じた直予約が増えたという。「やらないこと」を決断することで成功につながったわけだ。
最後に星野氏は、自身はアジャイル経営という言葉自体に馴染みは無かったと話す。星野リゾートのSE部門がアジャイル経営に強い思い入れを持っており、スタッフの想いがきっかけとなって今回の講演に至ったそうだ。「やらないこと」を柔軟に決定できることはアジャイルな姿勢そのものであり、言葉自体に馴染みが無くても「アジャイル経営」を実践できていたことが星野リゾートの成長につながったといえよう。