学びは「提供者主体」から「学習者主体」へ
「学びが個人で手に入る時代になってきた」こう語るのは、EdTech分野のトップランナーである佐藤昌宏教授。今日、インターネットの発展によりオンライン学習サービスが進化してきている。つまり、何の授業を、どこで、いつ受けるのかが柔軟になってきているのだ。これにより、主語が教育機関や先生、親や省庁といった、提供者側である「教育」から、学習者自体が主役となる「学び」へと変化しつつあるという。
さらにこの変化は、ビジネスにも深く関わってくると佐藤教授は語る。
主役が「提供者側」から「学習者」になってくるのが、教育の大きなトレンドになると私は思っています。これがEdTechイノベーションの本質であり、教育機関だけでなく、企業の育成や人事採用というものも変化すると認識しています。
企業の“一方通行”な研修
オンライン動画学習サービスを展開するスクーの代表取締役社長・森健志郎氏は、まさにビジネスパーソンの「教育の主役」を提供者から学習者へと変革しようとしている。新卒でリクルートに入社した森氏は、2年目の研修で受けたe-ラーニングの研修動画に対し違和感と可能性を感じ、その後スクーを立ち上げた。
講師の方がカメラ目線で、延々とロジカルシンキングについて10時間語る動画だったんです。企業の人材教育では、あくまで「ユーザーが自ら学びたいと考えること」よりも、「企業が何を学ばせるべきか」というところが主語になっています。しかし少しずつその流れは変わってきています。
しかし、社員が学びたいと考えることと企業が教えたいことの間には、当然ギャップも生まれる。業務内容の多様化が進む現在では、それはなおさらである。完全に「受け身」のかたちで研修や学習を行うのではなく、バランスをとることが重要だとLinkedInの杉本隆一郎氏は語る。
企業が研修を行うときは、ある程度のボリュームを費用対効果の面でもを意識しないといけないので、個々のニーズに対応しきれなかった。しかし、インターネットで学習提供が柔軟に行われようになったことを考えれば、企業が提供する学びも、その点を考慮しなければならない。「個人の軸でやる学び」と「組織全体でやる研修」、うまくバランスをとるべきだと考えています。