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組織戦略としてのデザイン

そのデザインは経営に寄与するか、創造性を最大化させるか──KOELが実践した事業支援と人材育成とは?

【後編】ゲスト: NTTコミュニケーションズ株式会社 KOEL 福田直亮氏、田中友美子氏、金智之氏

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 本連載では、先進企業のデザイン組織への取材を通じて組織変革の担い手としてデザイナーが今後果たし得る可能性やそのあり方を探っていく。今回取り上げるのは前編に続いてNTTコミュニケーションズのデザイン組織「KOEL」。ノキア、ソニーなど第一線で幅広いデザイン活動を行ってきた田中友美子氏を新たなメンバーに加えたKOELは今後、組織にどのような価値をもたらしていくのか。連載ナビゲーターは、武蔵野美術大学 クリエイティブイノベーション学科 教授で、ビジネスデザイナーの岩嵜博論氏。(※所属や肩書は、取材が行われた2023年6月時点のものです)

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デザインが経営に寄与するために、プロジェクト計画書の作成を義務付け

岩嵜博論氏(以下、敬称略):KOELでは「事業支援」と「人材育成」の両方をやるというお話でしたが、それぞれどんなことをされているのですか。

田中友美子氏(以下、敬称略):デザインのことを知ってますという人を社内に増やす「裾野を広げる」活動と、ちゃんと実力のある人を作る「トップを伸ばす」活動の2軸でやっています。

岩嵜:事業支援の過程で人を育てることもしているという意味でしょうか。

田中:事業支援の過程で、OJT的に一緒にやるということももちろんあります。ただ、入社してすぐに感じたのがまさに、その支援の仕方に問題があるということでした。「何か困ったことがあったら解決まで一緒にやりましょう」という並走式になっていました。それでは支援が場当たり的になってしまい、大きな成果は見込めない。もっと計画的に、「デザインの効果」を実感できるように、先を見通して支援する必要があると思いました。

 そこでまず行ったのが、KOEL内部で「プロジェクト計画書」の作成を義務付けることでした。どんな順番にどんなことを、どれくらいの期間、どんな目的でやるのか。その結果得られる成果物は何か。そしてプロジェクトの最終的な成果として何を提供するのか。これらを明記した最大3ヵ月の支援計画書を、新しいプロジェクトが立ち上がるたびに書くよう義務付けました。

 これがあれば支援が場当たり的になりません。また、デザインのことがあまりわからない事業部の人にも「やると良さそう」と思ってもらえるのではないかと。最大3ヵ月としたのは「3ヵ月なら、まずはやってみようかな」と思ってもらえるのではないかと考えたからです。

 計画書の作成を義務付けたせいで、KOEL組織内が少し厳しい雰囲気になってしまったのは反省点です。けれども成果は圧倒的に出始めました。事前に見通す癖がついたことで、メンバーの力量、意識の向上にもつながったと思います。

福田直亮氏(以下、敬称略):KOELを立ち上げて最初にやったことにもいろいろありますが、まずは事業部とのプロトコルを合わせる必要がありました。飲食店には必ずメニューがあるように、ビジョン策定、事業開発、事業改善、コミュニケーション設計などのフェーズにおいて、デザインでこんな支援ができますよというメニューを作成し、社内で説明行脚して回りました。そこに田中が加わり、メニューを実行するための支援の際の計画書作成を義務付けたことで、しっかりとコミットできる体制を整えていきました。

金智之(以下、敬称略):そうやってKOELとして事業の支援もやっていますし、各事業部の業務プロセス自体にデザインを入れ込むこともやっています。それぞれの業務プロセスを分析して、どういう人にどんなことを身につけてもらえばいいのかを考えて研修メニューを作ったり、実際の業務に沿ってプロジェクトベースで学んでもらったりということをしています。そういう取り組みトータルで「裾野を広げる」ことをやっています。

田中久美子
NTTコミュニケーションズ株式会社 KOEL イノベーションセンター デザイン部門 担当部長 田中友美子氏

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この記事の著者

鈴木 陸夫(スズキ アツオ)

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