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組織戦略としてのデザイン

なぜ『デザイン白書2024』は制作されたのか──日本のデザイン経営に必要な「幅」と「統合」への理解

【前編】ゲスト:公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事 矢島進二氏

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 本連載は、先進的な企業・団体のデザイン組織への取材を通じて、組織変革の担い手としてデザイナーが今後果たし得る可能性やそのあり方を探っていく。本記事では、2024年6月に公開された経済産業省デザイン政策室監修のレポート『デザイン白書2024』に焦点を当てる。同レポートは地域、企業、行政などのデザインに関する事例を120以上収録。国内におけるデザインの現在を俯瞰できる内容だ。どのような経緯と問題意識から同レポートは制作されたのか。発行元である公益財団法人日本デザイン振興会(以下、JDP)で常務理事を務める矢島進二氏に聞いた。聞き手は、連載ナビゲーターの武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授の岩嵜博論氏。

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デザインの最新事例を網羅した国内初の『デザイン白書』

岩嵜博論氏(以下、敬称略):今年6月にJDPから『デザイン白書2024』が発行されました。同レポートは地域や企業、行政など、国内のデザインに関する取り組みを網羅的にまとめた350ページに及ぶ大作です。私自身も非常に新しい取り組みだと衝撃を受けたのですが、まずは『デザイン白書2024』が企画された経緯をお聞かせいただけますか。

矢島進二氏(以下、敬称略):『デザイン白書2024』は経済産業省デザイン政策室が監修を、JDPが発行元を務めていますが、コンテンツの制作については三菱総合研究所DESIGN×CREATIVE TEAMが主体となり、アクシス、デザインシップが協力しています。JDPも制作に協力していますが、あくまで発行元という位置付けであることは初めに強調しておきます。

 企画の経緯については、2018年の経済産業省と特許庁による「『デザイン経営』宣言」の提言に遡ります。「『デザイン経営』宣言」は、デザインを経営戦略の中心に据え、企業競争力の向上を図る「デザイン経営」をテーマした政策提言です。これにより、企業や行政におけるデザイン活用の機運が一気に高まり、国内におけるデザインの社会的価値が増大する契機になりました。

 その後、さまざまなデザインに関する書籍の発刊や展覧会、カンファレンスの開催などに広がっていくなかで、2022年に経済産業省デザイン政策室が「我が国の新・デザイン政策研究」をまとめました。このレポートでは諸外国におけるデザイン政策の検討や国際比較などが行われ、そのなかで日本におけるデザイン政策の課題も提起されています。例えば、海外ではデザインに関する政策提言などを行うシンクタンク「デザインカウンシル」を設置する国があるが、日本にはその機能が手薄であるとか、国主導の「デザインミュージアム」が存在しないであるとか。さらに、最新のデザイン動向や、デザイン活用の効果などを調査する機能の不在も指摘されました。

 こうした問題意識を踏まえ、社会に対してデザイン活用を広く発信することを目的に制作されたのが『デザイン白書2024』です。同書は2023年にスタートした経済産業省デザイン政策室の「これからのデザイン政策を考える研究会」の成果物の一つとしてまとめられたものをベースにしています。具体的な内容としては、世界、地域、企業、行政、文化と5つの領域におけるデザインの事例を120以上収録。「我が国の新・デザイン政策研究」で提起された課題を乗り越えるため、デザイン活用に役に立つ知識や情報の提供を目指しています。

デザイン白書2024
デザイン白書2024(WHITE PAPER ON DESIGN 2024)』(2024年6月4日公開)

岩嵜:『デザイン白書2024』で衝撃的だったことの一つは、デザイン政策を「白書」としてまとめたことでした。

矢島:当初は一研究会のレポートという位置付けでしたが、経済産業省監修による白書として発刊したほうが社会的な浸透が図れるのではないかと判断し、所定の手続きを経て『デザイン白書2024』として発行しました。同書の目的は、デザイン動向の可視化や効果的な発信でしたので、よりインパクトの大きい白書という形で刊行できたのは、一つの成果だったのではないかと思います。

矢島進二
公益財団法人日本デザイン振興会 常務理事 矢島進二氏

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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