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日本総研とアビーム、「プロアクティブ人材」の実態と従業員のプロアクティブ化を促進する環境要因を調査

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 日本総合研究所とアビームコンサルティングは、企業の人的資本経営推進におけるキーファクターの一つである、キャリア構築に向けて自律的に行動する「プロアクティブ人材」の実態と、従業員のプロアクティブ化を促進する環境要因を明らかにすることを目的として、企業に勤務する20,400人を対象とした調査を実施した。

「プロアクティブ行動」「プロアクティブ人材」の定義

 両社は、「プロアクティブ行動」の構成概念を、キャリアを自ら築いていくための自律的な行動カテゴリーとなる「革新行動」「外部ネットワーク探索行動」「組織化行動」「キャリア開発行動」の4つと定義している。

 同調査では、これらのプロアクティブ行動の実践度合いを5段階で測定し、数字が大きいほど「プロアクティブ度」が高いとしている。今回、このプロアクティブ度が4.0以上の人を「プロアクティブ人材」、そして2.0以下の人を「非プロアクティブ人材」としているという。

 調査概要は以下のとおり。

  • 調査名:プロアクティブ人材の実態に関する総合調査
  • 調査期間:2022年1月6日~12日
  • 調査方法:ウェブアンケート(選択+自由記述)
  • 調査対象:企業勤務の従業員 
  • 調査人数:20,400名

 調査の主な結果は以下のとおり。

従業員自身の職務成果、キャリア実現度、仕事への意欲の3要素すべてにおいてプロアクティブ人材の数値は非プロアクティブ人材の2倍

 プロアクティブ人材が企業にとって有益な人材であるかどうかを分析するため、プロアクティブ度とアウトカム(社会や業績に与える影響)の関係性を捉えたという。

 組織内における自身の評価を示す「職務成果」、自身のキャリアの実現度合いを示す「自己実現」、仕事に対する意欲・熱意などを示す「ワークエンゲージメント」の3要素をアウトカムとし、それぞれプロアクティブ人材および非プロアクティブ人材ごとに数値を調査。その結果、3要素すべてにおいてプロアクティブ人材の方が、非プロアクティブ人材の2倍近くの数値を示し、プロアクティブ度の高さがアウトカムの高さに直結することが認められたとしている(表1)。

【表1】アウトカムとプロアクティブ度との相関関係
【表1】アウトカムとプロアクティブ度との相関関係
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プロアクティブ度は20代から40代にかけて減少。ミドル層に対するプロアクティブ度の維持・向上施策が重要

 プロアクティブ度について、年齢別および男女別の違いも調査。その結果、プロアクティブ度は20歳代から40歳代に向けて下がっていき、その後60歳代に向かって持ち直していく傾向があることが明らかになったという。特に、業務上中核的な存在であることが多い40代が最も低い値となっており、低下幅は男性の方が大きいことも分かったとしている(表2)。

【表2】年齢帯別のプロアクティブ度
【表2】年齢帯別のプロアクティブ度
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 これは、入社当初はプロアクティブであった人材が年齢を重ねるにつれて非プロアクティブな人材に変容していってしまっていることを示しているという。同調査は、プロアクティブ度の減少に直面しているミドル層に対して、いかにプロアクティブ度を維持・向上させていくかが、今後の重要な経営課題の一つになると考えられると述べている。

プロアクティブ度が高い人材は転職回数が少ない

 各人のこれまでの転職回数についても調査。その結果、転職回数が0回だった人の割合は、プロアクティブ人材で47.2%、非プロアクティブ人材で40.7%となった。反対に、転職回数が4回以上だった人の割合は、プロアクティブ人材で7.3%、非プロアクティブ人材では9.5%だったという。

 プロアクティブ人材のイメージとして、「ドライ」「次々に転職をする」というイメージが持たれる場合もあるが、同調査結果からはむしろ逆で、定着率はプロアクティブ人材の方が高いという結果になっている(表3)。

【表3】転職回数とプロアクティブ度との相関関係
【表3】転職回数とプロアクティブ度との相関関係
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 この結果からは、プロアクティブ度の向上施策を打っても人材の流出にはつながらず、むしろ記載の通り企業価値の向上に貢献することが言えるという。

チャレンジを認めてくれる職場や裁量・やりがいのある職務であるほどプロアクティブ行動が活発化

 プロアクティブ度は環境によって変化する可能性があるのかについて分析。その結果、「(その人の職場は)サポートがあり、チャレンジを認めてくれる職場であること」(職場特性)、「(その人の職務は)裁量があり、やりがいのある職務であること」(職務特性)という環境において、従業員のプロアクティブ度が高くなるという関係性が確認できたとしている(表4)。

【表4】職場特性・職務特性とプロアクティブ度との相関関係
【表4】職場特性・職務特性とプロアクティブ度との相関関係
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※「職場特性・職務特性の点数が高い人」は、「自身のキャリア実現に向けてサポートがある職場か」
「やりがいのある職務か」などの職場・職務に関する各質問項目(5段階尺度)の回答平均値が4.0以上の人を指す。
一方、低い人は平均値が2.0以下の人を指す。

まとめ(プレスリリースより抜粋)

 プロアクティブ人材のワークエンゲージメントは高く、企業業績への貢献と自ら思い描いたキャリアの実現を両立している傾向がみられました。企業にとっても本人にとっても理想的な「やりたいことを、業務を通じて実現し、成果が伴っている状態」にある人材と評価できます。加えて、離職という企業にとってのリスクが低い人材であることも注目したい点です。

 ただし、プロアクティブ度は20代をピークに年齢と共に下がる傾向があり、「放置すると下がる」恐れがあります。一方で、プロアクティブ度は職場特性や職務特性によって数値が異なることから、マネジメント次第で維持・向上させることが可能ともいえます。

 2022年3月の「人的資本経営に関する調査」(経済産業省)では、「人材投資の投資対効果の把握はまだまだ進んでいない」という経営者の問題意識が浮き彫りとなっています。人材一人ひとりのパフォーマンスの重要性が高くなる縮小社会下では、プロアクティブ人材の価値も一層高まります。今後は、プロアクティブ度を人的資本への投資対効果の測定指標として活用し、上司が一人ひとりのウィル(意志)に寄り添いながら、それぞれのプロアクティブ度を高めていくことが企業価値の向上に不可欠となると考えられます。

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BizZine編集部(ビズジンヘンシュウブ)

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