デロイト トーマツ コンサルティング(以下、デロイト トーマツ)は、AIによってビジネスを加速させる具体的なソリューション(ユースケース)を起点に企業の変革を支援するワンストップサービスを開始すると発表した。
AI技術の進歩が目覚ましい一方で、それを事業や業務における価値創出に具現化していくためには、ビジネスと技術を結び付ける方策が必要だという。このことは、デロイトの調査(『グローバルAI 活用企業動向調査 第5版』)において、AIの取り組みを企業が拡大する際の課題に、ビジネス価値の証明(40%)、AI開発とビジネスの課題・ニーズの整合(42%)が挙げられていることからも示されている。
これを受け、同社ではビジネスでのAI活用のユースケースを示すと共に、それぞれのユースケースを起点に、データ収集から分析基盤の整備、AIアプリケーション・プラットフォームの導入・運用までの全工程を設計し、一気通貫でのサービスを提供していくという。その際、データの秘匿性やアルゴリズムの公正性などAI導入に伴うリスクや懸念を評価・検討した上で、安全で責任あるAI活用の支援も実施するとしている。
具体的には、マーケティング&セールス、オートメーション、R&D・イノベーション、リスクモニタリングなど7つの分野の適用ケースについて、デロイトの海外ファームも含めた業界知見を掛け合わせることで、下記を含めた50件以上のユースケースをWebサイトで示すと共に、AI適用支援をワンストップで提供すると述べている。
AIのユースケース(例示)
- 小売需要予測:POSなどの店舗売上データや交通量、天気などのオルタナティブデータを活用することで、季節性や外部の影響を考慮し、店舗の一日の来店者数や来店時間の偏り、売れ筋商品の予測を高い精度で実行
- 飲食店のダイナミックプライシング:店舗の来客データや食品在庫データをもとに、余剰がある商品を割引価格で提案・提供できる仕組みを整えることで、売上向上を図るとともに、効率的に食品在庫を消費することによる食品ロス削減に貢献
- 生産スケジュールの最適化:機械の稼働状況をリアルタイムに計測し、非効率な工程を識別・改善することでこれまでよりも効率性に優れた生産スケジュールを組むことが可能
- ビジネスプロセス改善による在庫コスト削減:商品の需要予測から発注・生産・販売のプロセス全体のスケジュール調整をAIで行うことで仕掛品の中間在庫を削減したり、予測と実績の乖離を縮小させるようにAIの学習を進めることで安全在庫を削減したりでき、在庫管理におけるコスト削減が可能
- 機器の異常検知:産業機械やIoTセンサー機器から生成される大量のリアルタイムデータを転送し、迅速に分析することで、危険物の漏出や誤動作に関する警告を発信し、事故の防止や生産性の向上に貢献
- 臨床試験データ管理の自動化:データ構造を標準化し、臨床データの収集から臨床試験に関するレポート等の各種成果物の作成までのライフサイクルをAIを用いて自動化・高速化することで、新薬上市までの期間を短縮する効果を見込む
- 診療予約の自動化:自然言語処理や音声認識技術を活用し、医療施設経営において大きなコストとなる電話での対人予約を自動化する
- 接客スキル向上:顧客への接客や商談などのシーンを仮想空間上に再現し、AIとの相互のやり取りを通じて対面に近い接客や商談の流れをシミュレーションできるようにすることで従業員の接客スキルを向上
- キャリアサポート:社員の志向や配属履歴、評価データを類似の先輩社員と照らして、今後の配属先や身に付けるべき経験・スキル等をAIで明らかにすることでキャリア形成をサポートし、従業員のエンゲージメントを高める
- 人事異動時の人材配置:AIを用いて各組織・ポジションとのスキルマッチやメンバーとの相性を分析し、配属やプロジェクトにおけるチーム組成にあたっての最適配置案を検討することでより高いパフォーマンスの発揮が期待できる人事異動の検討が可能