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組織戦略としてのデータとCX

デジタル庁樫田氏に聞く、データ分析組織にとって大切な「構造理解と融和的な振る舞い」とは

【前編】ゲスト:デジタル庁 Head of Unit, Fact & Data 樫田光氏

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大規模組織で変革を可能にする「タイミングと人」とは

──構造を把握し、タイミングは見極める。具体的にお聞きしたいです。

 大企業でのデータ分析はすぐに動き出すわけではありませんし、すぐに何かが実装できるわけではありません。例えば大手通信キャリアでデータを根拠に、「月々の価格を一律200円上げると売上が上がるので、実施しましょう」と提案しても、次週から実施できるわけがありません。顧客や各営業店だけでなく、それこそ所管する省庁への説明も必要ですし、法律面でのチェックもしなければなりません。大企業におけるデータ分析は、妥当性を丁寧に検証し、幾層ものメンバーを説得してコンセンサスを作るプロセス、そして仕組みを作るプロセスに用いられるのです。

 だからこそ、ユーザーを新規顧客、既存顧客I、既存顧客IIなどとセグメント化したうえで、経営企画室などと連携してモニタリングをします。それをもとに営業成績を測り、セグメントそれぞれの価値を検証します。すると「このセグメント分けや営業成績の見方が、経営発表などに毎回書かれているから、この見方は重要なのだろう」と社内に伝わっていきます。仕組みと構造から人に働きかけるのです。そうするとひいてはセグメントごとの施策などから、まずは実施できるようになり、その繰り返しがデータドリブンな組織の下地、基礎体力となります。このように、データを通したガバナンスの発想で、経営のアジェンダや仕組みにデータを使うのがもっとも効率がよいのです。

 大規模な組織を変えていくにはタイミングが極めて重要です。大企業には「変革が可能な時期」という狭いウィンドウが存在します。複数年の経営計画を立てたけれども、1年経っても鳴かず飛ばずで株価も下がっている。そうしたタイミングでは「今こそ変革だ」という気運が社内で高まります。また、経営に新たに参画した執行役員などが「データドリブン経営」を重視しているようであれば、そこに寄り添えば何か動くかもしれません。構造を把握したうえで、人とタイミングを見極め、それに合わせた仕組みを導入することが重要です。


■後編『データで結ぶ、戦略と実行──デジタル庁 樫田氏に聞く、実践的なデータドリブン経営とは?』へ続く

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この記事の著者

雨宮 進(アメミヤ ススム)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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