データで結ぶ、事業計画というトップラインにおける戦略と実行
──ここからはデータ分析組織を率いるリーダーとして、樫田さんがキャリアで得た学びなどをお聞きできればと思います。
データ分析の仕事は、未来のことを考えているチームと話すことが多いので、働いていて楽しいです。新しい機能のアイデアやどういったマーケティングキャンペーンを打つとどれほど売上を伸ばせるか、などが議題になります。データ分析を通してアイデアを評価し、そのうえで、どのようなユーザーに絞るべきかなどを議論します。それが実際に結果につながっていきます。前職のメルカリでは最初の1年ほどはそうした仕事をしていました。
とはいえ、データ分析組織がそもそも何に取り組むべきか、マーケティングチームがきちんと存在できるか、機能開発チームがどれほど人員を割くことができるかなどは、最終的には経営のアジェンダに強く左右されます。当時メルカリの現場は適切な指標でデータを見ながら運営ができている稀有な組織だったと思います。ただ、一般的には現場の感覚とは乖離した目標指標が経営層から降りてきて現場は困惑していると聞きます。そんなこともあり、現場を超えた経営方針の重要性に着目し、興味を持っていました。
データの専門チームができることとして、経営戦略や事業戦略が曖昧な言葉で表現されないように、何とか理想と現実を「データ」でつなごうと考えました。経営層が作った戦略を「データ」で表現し現場に渡したときに、違和感なく受け入れられるような仕組みを作ることを目指しました。
簡単に例を挙げれば、経営企画や財務系のExcel上での計算を元に考えていると、月間アクティブユーザー数(MAU)を目標指標にするように経営方針はありがちです。しかし、MAUというのは、現場からすると日々の施策において直接上げられる数字ではありません。どちらかというと副次的に上がってくる数字です。ところが、経営層からすると来店人数やアクティブユーザー数の増減はとても分かりやすいので、指標として選ばれてしまう。
例えば、百貨店やスーパーの販売現場で購入者数は重視しているでしょうが、来店者数はそれに比べて重視していないはずです。チラシも、来店してもらうためではなくて、来店し購入してもらうために配っています。もちろん来店者数を上げるための仕掛けもあるでしょうが、買ってくれた人数を指標にした方が、現場としてはどう動けばいいかを考えやすいはずです。
この例では、経営層が考えるアクティブユーザーの増加という戦略と、購入者数、ひいては売上を増やしたいという現場の思惑とがずれています。このようなケースを念頭に、戦略と実行をうまくつなげるようなフレームワークや事業計画のプランニング手法を考え出したいと考えました。