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イノベーションを加速させる「知識の新結合」

第5回

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「知識」は主にどから入手・蓄積が可能なのか?

 前のページで、「知識」の獲得・蓄積には2つの経路があり、「組織内」と「組織外」があることをお伝えした。2つの詳細を解説しよう。

1:組織内の知識

 「組織内の知識」で最も価値が高いのは、「学習的失敗」(前回記事、参照)で獲得された知識だ。150以上の新製品開発事例を扱った研究でも、失敗から得られる知識が、次の商品の成功のカギになると明らかにされている。

 失敗を「学ぶ機会」と捉える態度の例として、IBM創業者のトーマス・ワトソンによるエピソードがある。ある若いマネージャーが、事業を失敗させ、会社に60万ドルの損害を与えることがわかった。ワトソンはマネージャーを呼んだ。呼び出されたマネージャーは解雇を覚悟した。しかし、ワトソンはこう言った。「辞めるなんてとんでもない。私たちは君の教育に60万ドル払ったのだから」と。

 関係者が失敗した際には、「貴重な知識を組織は獲得できた」と認識せねばならない。

トーマス・ワトソン/Photo by IBM トーマス・ワトソン/Photo by IBM

2:組織外の知識

 「組織の外にある知識」の代表例は、現場で得られる新しい発見だ。これは、主に個人的な体験がベースとなる知識であり、イーベイのオミダイアやソニーの盛田昭夫のように、日常的な場面を意識的に観察することで獲得することができる。

 たとえば、ゼロックスのパロアルト研究所では、多くの人類学者を採用しており、たとえば新しいオフィス機器がどのように使われるのか、といったテーマでユーザーの観察を行なっている。

 組織の中で起こった失敗からの学びや、組織の外で起こっているユーザーの行動観察結果は、すべて「知識」と位置づけることができる。組織内での学びを深めるには、失敗を恥ずべき行為ではなく、知識獲得のための一つの手段として捉えることが求められる。組織外においては、人間の行動を観察することで、文化人類学的な観点からの知識を得ることが大事だ。

 従来であれば知識とみなされなかったものを積極的に獲得・蓄積することで、「新結合」に必要な素材をより多く集めることができる。

次のページ
組織的な知識の獲得

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この記事の著者

柏野 尊徳(カシノ タカノリ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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