日本におけるプロジェクトマネジメント
──先ほどIBMの例をご紹介いただきましたが、グローバルではプロジェクトマネージャーは職種として確立されたものになっているのでしょうか。
カン:国によって価値観やいつ資格を取得するかなどの考え方は異なりますが、米国などではプロジェクトマネージャー、プログラムマネージャーは確立された役職になっています。このような国々では、プロジェクトマネージャーになりたい人の多くが、プロジェクトマネジメントの“言語”を身につけたいと、コミュニティに参加します。そして、PMPなどの資格を取得し、専門家になっていきます。これがプロジェクトマネージャーとしてのキャリアパスになります。
それとは違ったキャリアパスで、プロジェクトマネジメントを学ぶ人たちもいます。たとえばソフトウェアエンジニアや、デザイナー、弁護士など、専門職としてキャリアをスタートした人が、昇進して中間管理職になったからとプロジェクトマネジメントを学んでいます。なぜなら、中間管理職になると様々なプロジェクトと収支の責任を負う必要が生じ、それがプロジェクトマネジメントに密接に関わってくるからです。
──そういった方々は、個人で研修や資格認定を申し込んでいるのでしょうか。
カン:日本では企業が支援することが多いですね。また、香港やシンガポールなど、国が補助を出す国もあります。こういった国の場合、個人は自分でキャリアアップしやすいですよね。
──日本では企業が支援するということでしたが、日本企業ではプロジェクトマネジメントの職種が確立されているから支援をされるということなのでしょうか。それとも、日本企業ではプロジェクトマネジメントのスキルが必要だから、企業は従業員に身につけさせたいと思っているのでしょうか。
カン:両方だと思います。アジア太平洋地域の中で、日本の組織はプロジェクトマネジメントの適応に関してかなり成熟しています。その理由には、数十年前からプロジェクトマネジメントの価値を認識してきたからということがあるでしょう。どのような能力が必要かを把握しているので、従業員に必要な能力を身につける研修や資格取得を支援するのだと思います。専門職だった人が中間管理職になった時と、次世代リーダー候補に対してキャリアの早い段階で支援する時という2つのパターンが多いです。
日本企業は、2つの点で強みを持っています。1つは、多くの企業でプロジェクトマネージャーのスキルは高く、既にプロジェクトを行えるのに、さらに技術を高め、学び直すことに興味を持っていること。そしてもう1つは、生成AIのような新しい技術に興味を持っていることです。この点は本当にすばらしいですよね。