非鉄道事業の拡大を目指す。Suica事業のデータがカギに
現在のJR東日本は、鉄道以外にも、交通系ICカード「Suica」、コンビニエンス・ストア、ホテル、駅ビル、不動産開発など幅広い事業を展開している。1987年に国鉄から分割民営化された当初は、鉄道事業と非鉄道事業の収益比率は9対1であったが、現在は6対4ほどだ。ここから、さらに5対5への変化を目指しているという。
なぜ、そのような変化を目指しているのか。大きな要因の一つは、鉄道事業の中長期的な成長が見込みづらい点にある。少子高齢化や人口減少が進めば、必然的に鉄道のユーザーも減少していく。また、コロナ禍のような混乱が訪れれば、人々が鉄道を利用しない・できない日常がまた突然やってくるかもしれない。一方、非鉄道事業ではまだ成長の余地が大きいため、事業ポートフォリオの変革が行われているのである。
非鉄道事業を拡大する際、JR東日本にとって要となるのがSuica事業だ。Suicaは、交通機関や買い物の支払い時に、電子マネーとして既に広く利用されている。他にも、駅のコインロッカーなどでは鍵の代わりに利用できる。今後は、マンションやオフィスなどへの認証ツールとしての利用シーンの拡大、あるいは東京ドームなどで一部スタートしているような、スポーツや展覧会などのチケットをSuicaに同期するサービスの拡大も構想しているという。
Suicaの利用が増えれば、当然だが集まるユーザーの履歴データも増えていく。他社を含めた鉄道の利用において、どの駅のどの改札をいつ通過したか、また、バスやタクシーでの利用履歴も記録される。すべてのSuicaには固有のIDが付与されているため、ID単位でのデータ蓄積が可能だ。ただし分析の際は、個人を特定するようなことは行っていない。
ショッピングについても、店舗名や利用時間、利用額やチャージ金額は把握できる。JR東日本が直営する店舗では、商品名も把握できる。さらに、SuicaとJREポイントのアカウントを紐づけている場合には、ECモール「JREMall」での購入履歴、あるいは新幹線特急など中長距離線の切符が購入できるウェブサービス「えきねっと」での利用明細なども記録される。
さらなる事業変革と拡大を推進すべく、これらのデータを活用するための組織づくりを推進しているのが、同社のマーケティング本部だ。