DXプロジェクトにおけるAIの役割とAI活用例
DXプロジェクトでのAI活用を考える前に、まずはDXの定義を再確認しましょう。
経済産業省は、DXを次のように定義しています(太字は筆者による強調)。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
ここで重要なのは、データやデジタル技術を用いて業務を“効率化”するだけではDXとは言えない点です。DXでは、根本的な変革を行い、競争上の優位性を築く必要があります。DXプロジェクトの目的は「データとデジタル技術を活用してビジネスを変革し、競争上の優位性を確立すること」と言えるのです。
それでは、本連載の主題である「DXプロジェクトにおけるAI活用のメリット」は何でしょうか。簡単に言えば、「AIを利用することで以前は不可能だったことが可能になること」です。他社が実現していないことの達成は、DXプロジェクトの主目的である「競争優位性の確立」に直結します。
具体的なAI活用の主なメリットは以下の3点です。
- 業務の効率化と自動化
- データに基づく意思決定の質とスピードの向上
- 顧客体験の向上
一部社名は伏せたものになりますが、DXプロジェクトにおけるリッジアイのAI活用事例を簡単に紹介します。
「業務の効率化と自動化」の事例
リッジアイは荏原環境プラントと共同で、収集したごみを一時的に溜める「ごみピット」を撮影してごみの種類を自動判別するAIを開発しました。AIを導入することで、ごみの撹拌や焼却炉へ投入するクレーンの自動運転の精度は、AI導入前の16%から89%にまで向上しました。
作業者はより重要な業務に集中できるようになり、ごみ焼却施設の運転効率の向上に貢献できました。
「データに基づく意思決定の質・スピードの向上」の事例
大手プラントA社では、生産設備に問題が発生した場合、迅速な保全工事が必要です。頻繁に工事依頼が発生するため、人手による優先度に基づく保全要員のスケジュール割り当てには限界が存在します。この問題に対して、AIを活用して保全依頼の優先度に基づく割り当てを行うことで、人の介在によるボトルネックを解消し、スケジュールの質とスピードを大幅に向上させることができました。
「顧客体験の向上」の事例
消費者向け製品を提供する製造業B社では、消費者が安全に利用できる製品を提供しています。しかし定期メンテナンス以外に顧客への個別サポートを提供するには限界がありました。この問題を解決するために、スマートフォンを使って製品の写真を撮影し、AIがその状態を判定するアプリを開発しました。その結果、AIの活用によりパーソナライズされた顧客体験を提供することが可能となりました。