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組織戦略としてのデザイン

ビジョンが“北極星”ではなく“舞台”である理由──他人ごとにならず、個人が役割を見い出せる条件とは?

【特別回・後編】ゲスト:株式会社グラグリッド 代表取締役/ビジョンデザイナー 三澤直加氏

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 前編に引き続き、武蔵野美術大学クリエイティブイノベーション学科教授(ビジネスデザイナー)の岩嵜博論氏と、株式会社グラグリッド代表取締役でビジョンデザイナーの三澤直加氏による対談をお送りする。後編では、三澤氏の近著『正解がない時代のビジョンのつくり方』(翔泳社)の内容に触れながら、トップダウンによる押し付けではない、組織の一人ひとりが「自分事化」できるビジョンのつくり方について話題が及んだ。

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ビジョンは「北極星」ではなく「舞台」である

岩嵜博論氏(以下、敬称略):このあとは、三澤さんの『正解がない時代のビジョンのつくり方 「自分たちらしさ」から始めるチームビルディング』(翔泳社・以下、本書)について話したいんですけど、そもそも本書を書いた動機は何だったんですか。

三澤直加氏(以下、敬称略):今、世の中にはMVVの解説書やつくり方に関する本はたくさんありますが、その世間的な受け止めに違和感をおぼえていました。そこで、デザイナーから見えている、共創型のビジョンのつくり方を体系化してみたいと取り組みました。

 本書にも書いているんですけど、今の時代に必要なビジョンは「北極星」ではないと思うんですよね。集団をある一定の方向に突進させるためのツールは、今の社会にはマッチしない。本の中では、ビジョンは「舞台」のようなものとして表現しています。ある世界観の中で一人ひとりが役割を担って、自分なりの歌い方や踊り方を実践できる“曖昧さ”が必要なんですよ。でも、一部ではMVVやビジョンは多くの人を統制して、一定の方向に向かわせるための道具だと認識されているような気がします。

舞台としてのビジョン
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岩嵜:僕は数年前に『パーパス「意義化」する経済とその先』(NewsPicksパブリッシング)という本を共著で書いたんですけど、その中でMVVとパーパスを分けているんですよ。大まかにいうと、MVVは「小さな船」でパーパスは「大きな船」。小さな船にはその組織しか乗れないけど、大きな船にはステークホルダーや消費者や社会全体も乗ることができる。

 つまり、パーパスでは自らの組織だけではなく、組織を取り巻く人々や社会全体と共有できる目標を設定する必要があるし、それを作るためには未来の社会のあり方を洞察しなければいけない。その意味では、僕にとってのパーパスと三澤さんのビジョンは似ていると思う。

三澤:そう思います。それを本書では「正解を示す『点』から、解釈の余地のある『面』へ」といっているんです。ビジョンは、一つの絶対的な目標ではなく、多くの人と共有できる世界観として創り上げていくべきだと思うんです。

三澤直加
株式会社グラグリッド 代表取締役/ビジョンデザイナー 三澤直加氏

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この記事の著者

島袋 龍太(シマブクロ リュウタ)

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