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SAS、2024年の金融サービス業界向けテクノロジーとトレンド予測を発表

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 米国SAS Institute(以下、SAS)は、2024年の金融サービス業界向けテクノロジーとトレンド予測を発表した。

銀行破綻が拍車をかけるリスク管理の見直し

「2024年にはさらに多くの銀行が破綻することになり、銀行はリスク管理において最も重要な『この銀行がデフォルトに陥る確率はどの程度あるのか?』という問題を意識せざるを得なくなるでしょう。そして、実存する問題に応えるために、ツールやテクノロジーを導入することでしょう。リスク担当者を対象に行った最新の調査によると、80%の企業が自社の資産負債管理(ALM)部門の大幅な改革を検討しています。しかし、自社においてALMとその他のリスク部門やビジネス部門とのデータ共有が完全自動化されていると回答した企業は、全体の3分の1以下に留まりました。今こそ、この状況を変える時です」(SASのリスク調査および定量ソリューション担当マネージングディレクター、ドナルド・ファン・デベンター(Donald van Deventer)氏)

生成AIがもたらす「詐欺の暗黒時代」が不正対策の進化を後押し

「消費者が詐欺に対する警戒感を高めていることを示しているにもかかわらず、生成AIやディープフェイク技術は詐欺師が数兆ドル規模の犯罪技術を磨く手助けをしています。フィッシングメッセージはますます洗練され、偽のWebサイトは驚くほど本物そっくりになっています。詐欺師は数秒間の音声があれば、シンプルなオンランツールを使用して5ドルで音声クローンを作成できます。私たちは詐欺の暗黒時代に突入しつつあり、銀行や信用組合はAIを導入することで失われた時間を何とか取り戻そうとするでしょう。こうした動きは、間違いなく、急増するAPP(承認済みプッシュペイメント)詐欺やその他の詐欺に対して、金融機関により大きな責任を強いる規制上の変化が発端です」(SASのリスク、詐欺、コンプライアンスソリューション担当シニアバイスプレジデント、スチュ・プラッドリー(Stu Bradley)氏)

保険会社はAIの支援を得て気候リスクに立ち向かう

「何十年も前から懸念されてきた気候変動が、憶測上の脅威から真の脅威へと形を変えました。自然災害による世界の保険損失は2022年に1,300億ドルを超え、世界中の保険会社が苦境に立たされています。例えば、米国の保険会社は、保険料の引き上げや、カリフォルニア州やフロリダ州のように大きな被害を受けた州から撤退するなど、数千万人の消費者を窮地に追いやっているとして、厳しい監視の目を向けられています。こうした危機を乗り切るために、保険会社はAIの導入を進めて膨大なデータストアの持つ可能性を引き出すことで、流動性や競争力の向上を図るでしょう。AIは、ダイナミックな保険料設定とリスク評価で利益を実現するだけでなく、保険金請求処理、不正検出、顧客サービスなど、さまざまな業務の自動化と強化に役立ちます」(SASのリスク・リサーチおよび定量的ソリューション担当シニアバイスプレジデント、トロイ・ヘインズ(Troy Haines)氏)

AIが変革する金融犯罪コンプライアンス

「AIはアンチ・マネーロンダリング(AML)プログラムの在り方を大きく変えることになるでしょう。世界のコンプライアンス費用は今や2,740億ドルに達し、そのうちの60%が人件費です。国連によると、毎年最高2兆ドルもの不正な資金洗浄(マネーロンダリング)が行われています。そうした犯罪による収益の没収はわずか1%に留まり、アラートの95%は誤検知です。これは極めて憂慮すべき数字です。機械学習やネットワーク分析で既存のAMLシステムを拡張し、誤検知率や見逃し率を下げ、AMLの捜査担当者やコンプライアンス部門により質の高いアラートを発出することで、取引モニタリングは大幅に改善されるでしょう」(SASのグローバル銀行業界アドバイザー、ジョーン・マッゴーワン(Joan McGowan)氏)

意図的なAI導入が保険会社の成否を分ける 

「2024年には、世界の保険会社の上位100社の中で1社は、生成AIの導入を急ぎすぎた結果、倒産することになるでしょう。保険会社は目下、自社のビジネスモデルに合わせたカスタマイズもせず、猛スピードで自律型システムを導入しています。AIを利用して請求を迅速に処理することで、過去数年間の業績不振を相殺できると期待しています。しかし、2023年の人員整理後、残された人材は分散し、あまりに手薄で、AIを倫理的かつ大規模に導入するために必要な監督を行うことができなくなるでしょう。AIが万能薬であるという神話が何万もの誤った経営判断を引き起こし、企業崩壊につながって、消費者と規制当局からの信頼を取り返しが付かないほど損なう可能性があります」(SASのグローバル保険戦略アドバイザー、フランクリン・マンチェスター(Franklin Manchester)氏)

中央銀行デジタル通貨がもたらすメリットとリスク

「現在、世界80カ国以上で、ナイジェリアの『eナイラ』のような中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)導入の検討を政府が進めています。2024年にはCBDCが一般的に広まり、金融包摂をさらに大きく促進する可能性を持つ、政府支援による安全なデジタル決済オプションを市民に提供するようになるでしょう。しかしCBDCには、 金銭的な損失やデータ漏洩によるエクスポージャーの拡大、ミュールアカウントを介したアカウントの乗っ取りや資金流出など、特有の詐欺や金融犯罪のリスクが伴います」(SASのエンタープライズ不正対策ソリューション グローバルリード、イアン・ホームズ(Ian Holmes)氏)

生成AIの成熟

「万能薬としての大規模言語モデル(LLM)への過大な期待は、個人情報保護や法的規制の可能性、さらにアーキテクチャの構築や維持に膨大なコストがかかることから、沈静化していくでしょう。今後の焦点は、特定のユースケースでのLLMの収益化に移っていくでしょう。基盤となる『会話型モデル』を提供するベンダーはごく少数に限定される一方、大多数のベンダーは企業が独自の目的に応じてモデルを調整するための支援を行うことになるでしょう」(SASのリスク・モデリングと意思決定責任者、アンソニー・マンクーゾ(Anthony Mancuso)氏)

AIが景気後退を当面の間阻止

「人工知能(AI)や自動化の発展が生産性向上の原動力になるでしょう。資本労働比率が高まり、生産性のさらなる向上に貢献することになります。その影響は、デフォルトや構造的失業が急増したとしても、ほとんどの市場で景気の停滞を阻止できる程のインパクトがあるでしょう。しかし、業界レベルでは状況にかなりの差があり、一部の業界では不況に近い状況を経験することになるでしょう」(SASのリスク・ポートフォリオ責任者、スタス・メルニコフ(Stas Melnikov)氏)

リスクモデルの再キャリブレーションで試される企業の能力

「コロナ禍において、優れた銀行は迅速にリスク意思決定モデルを再構築して導入したのに対して、他の多くの銀行はデータ収集だけで何カ月もかかっていたことを覚えているでしょうか?2024年には、迫りくる景気後退リスクやデフォルト率の上昇によって、銀行はより適切なモデルや融資方針、予測を採用する必要に迫られ、ITインフラのスピードと俊敏性、より幅広い能力が試されることになるでしょう」(SASのリスク・リサーチおよび定量的ソリューション 上級顧問、ナイーム・シディキ(Naeem Siddiqi)氏)

会話型AIによってカスタマー・エクスペリエンスは新たな次元へ

「チャットボットはすでに金融サービス業界でも一般的になっていますが、より人と人とのやり取りに近いチャットボットになったらどうでしょうか?2024年には生成AIがさらに進化し、保険会社や銀行を始め、さまざまな業界の企業でより現実となることでしょう。会話型AIのそうした進化は、顧客とのミュニケーションを効率化する上で重要な役割を果たします。これによって、組織は従業員をより複雑なタスクやシナリオに優先的に振り分けられるようになるため、業務の効率化やコスト削減を促進できます」(SASのリスク・リサーチおよび定量的ソリューション、グローバル・インシュアランス・リード、オアナ・アブラメスク(Oana Avramescu)氏)

デジタルバンキング革命における「バンクレス(銀行不要)」が拍車をかけるAIイノベーション

「2024年、先進的な銀行は、デジタルバンキング革命の恩恵を最も受けるのは誰で、誰が取り残されているのかを見極めることによって、より包括的なカスタマー・エクスペリエンス(CX)の創造に努めるでしょう。メインストリートやショッピングモール内にある支店数が激減したことで、大量の口座保有者が『バンクレス』の状態に陥りました。デジタルに自信のない人たちに金融プロバイダーとオンラインでやり取りするという難題が突き付けられているのです。一方で、2021年末の調査によると、英国では顧客の4分の1が今後2度と銀行の支店に足を踏み入れることはないだろうと回答しています。先見の明を持った金融機関は、AIを搭載したデジタルエンゲージメントを充実した支店エコシステムに織り込んで、競争における差別化要因として、顧客とのつながりを強化し、シームレスなCXを実現しようとするでしょう」(SASのグローバル金融サービス担当ディレクター、アレックス・クビアトコウスキ(Alex Kwiatkowski)氏)

AIの「説明可能性」が保険の意思決定の公平性と透明性を促進

「AIが保険業界の倫理的再調整に火をつけることができるでしょうか?2024年にはその答えを見つけることになるでしょう。保険数理的に正当化されたリスク判断は、意図せずして歴史的に社会から疎外されてきた人たちの不公平をさらに助長する可能性があります。しかし、保険会社がAIや機械学習を導入するためには、 自社のモデルやアルゴリズムがどのような判断(例えば保険料や保険請求の決定など)を下すのかを理解する必要が生じます。このようなAIの説明可能性によって、保険業界全体を通じた透明性と公平性の新たな基準が設定される可能性を秘めています」(SASのEMEA地域 保険業務担当リーダー、アレーナ・チシュチャンカ(​​Alena Tsishchanka)氏)

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