ガートナージャパン(以下、Gartner)は、日本におけるデータ活用の取り組みに関する最新の調査結果を発表した。
データ利活用に対する日本企業の関心は依然として高いものの、全社的に成果を得ている割合は3%程度で、前回の調査(2022年7月実施)時の2.2%から、あまり変化していないことが明らかになったという。シニアディレクターアナリストの一志達也氏は次のように述べている。
「日本ではデータの利活用に対して高い関心が継続的に示されているにもかかわらず、その成果に対する自己評価は高まっていません。これは、組織としての取り組みや、その成果がまだまだ不十分であると感じているユーザーが多い現状を示唆しています」
データ利活用に対する企業姿勢や組織体制が整っていない企業が多い
同調査で、回答者の所属する企業のデータ利活用に対する状況、あるいは組織体制について尋ねた設問では、約6割が「該当するものがない」と回答。この結果から、企業全体としての姿勢は積極的とはいえず、具体的な取り組みを推進するための組織体制も整っていない状況が浮き彫りになったという。
日本企業、特に大企業の多くはDXの旗印を掲げ、そのための部門を設立して投資を積極化させている。そのため、デジタル技術の活用については企業としての姿勢も内外に示されており、組織体制も構築されているとのこと。一方で、データ利活用に対する関心がないわけではないが、社内外へ発信される言葉はDXやデジタルであるため、それらと比べるとデータ利活用に対する取り組みの姿勢を内外に示すこともなく、組織体制も整備されていない状況にあることが推察されるとしている。
一志氏は、「何に取り組むのか、どのような体制で臨むのかは各企業で決めることですが、企業として取り組む姿勢を内外に示すこともなく、そのための組織体制も整備されていないなら、十分な成果につながらないのも納得できます」と述べている。
一方、回答者の企業におけるデータ管理の状況について尋ねた別の設問では、「分からない」と回答した割合が半数を超えていることに加えて、データ管理で重要となるデータの取り扱い方や権限についての明確なルールや、データ品質の管理責任者、データ管理の専門組織などを定めているという回答が、回答の総数に対して少ない結果となった。
一志氏は次のように述べている。
「この結果は、ほとんどの日本企業では、ビジネスを遂行する上で必要な指標管理は組織的に行われておらず、データに関するガバナンスが効いていない状況を示しています。データ利活用というと、データ・ドリブンな業務遂行や意思決定が求める成果として挙げられますが、基本的な指標管理がない状態で、なし遂げられるものではありません」
「今回の調査では、多くの日本企業がデータの資産価値や管理の重要性を組織として認識しているとは言えない状況が浮き彫りになりました。その要因の一つとして、組織が何をしているのかを発信する力が弱いことから、データ利活用に対する組織の方針や活動内容が一般社員にまで浸透していない日本企業が多いとGartnerはみています。データの利活用によってビジネス上の成果を得たい、あるいは組織をデータ・ドリブンにしたいと考えるデータ/アナリティクス(D&A)リーダーは、データに対する組織の関心と理解を得るために、経営層がデータ利活用に対する組織の意思や期待を明確に示し、それに基づいてD&Aチームの描く展望や戦略を組織全体に浸透させ、D&Aが業務やKPIの向上にどう役立つのかを、様々なチャネルを通じて周知することが重要です」