DXに欠かせない“3つの視点”
──まずは顧さん、中村さんの経歴を教えてください
顧文博氏(以下、顧):中国の大学でエンジニアを専攻し、日本での就職を目指しました。北海道のドラッグストアで働いた後、ミスミに転職。センサーや画像処理関連部品に関する業務全般を担当し、日本の中小企業と多く接点を持ちました。このときに感じたのが、日本の中小企業は素晴らしい技術や製品を持っているものの、生産現場の管理が非効率だということです。この問題を解決したいと思い、ミスミを辞めてスタートアップを立ち上げようと考えました。ところが外国人としてビザや資金の問題に直面し、苦労していたところ、ナカタケグループの会長と出会い、彼の支援でナカタケテックを立ち上げることになったのです。
中村祥子氏(以下、中村):2000年4月より、日系企業でソフトウェア品質保証エンジニア、プロジェクトマネージャーなどを歴任してきました。その後、2019年より日本マイクロソフトにてカスタマーサクセスマネージャーとして、お客様の事業ビジョン実現に向けて、デジタル活用や組織のチェンジマネジメントを推進してきました。一貫して、お客様のビジネスをより良くするためのデジタル活用・システム導入に関わってきました。 2022年11月よりINDUSTRIAL-Xに入社し、現在は、同社執行役員CAOとして、企業DXのみならず産業DXにも挑戦しています。
──ナカタケグループはどのような企業体なのでしょうか。
顧:ナカタケグループは、大手ホテルチェーンのオリジナル家具等を中国にて製造・輸入・販売することを事業の柱としています。5年前、静岡県焼津市にある製造拠点を買収し、事業を拡大する過程で様々な課題に直面。既存のシステムや仕組みの制約を感じ、DXの取り組みをスタートしました。
──それを担当したのが顧さんということですね。工場からしたら、本社からよくわからないDX担当者が来たわけで、反発も多かったのではないでしょうか。
顧:実は、“3つの目線”を大事にしてアプローチしたので、目立った反発はありませんでした。
1つ目は、「経営」目線でのアプローチです。経営者との対話から彼らの目標と抱える課題を理解しました。2つ目は、「現場」目線です。現場の従業員に話を聞き、彼らの日々の悩みに耳を傾けました。たとえば、残業申請や有給休暇の申請など、紙ベースでの煩雑な作業の非効率性を解消するために、QRコードを使ったシステムを導入し、データの簡単な送信を可能にしました。
しかし、DXの過程では技術不足が大きな問題となります。一般的には専門領域と見られているので、外部のITベンダーに頼らざるを得ません。そこで、私たちは3つ目の目線である「技術」を提供し、現場のニーズと経営層の要求を同時に満たす方策を模索しました。なお、このアプローチを成功させるためには、現場の業務を効率化する一方で、経営層が必要とするデータを収集することがポイントです。
このような手法により、部分的な最適化ではなく、経営視点も踏まえた全体的な最適化を目指すことが可能になりました。当社の焼津工場はこのDXによって、従業員の日常業務の簡素化と経営層の必要とするデータ収集の両方を同時に改善することに成功し、全社的なトランスフォーメーションを実現する一歩となったのです。