「もうひとつの時間」 星野道夫の著作に導かれて
そもそも春山さんが、アラスカに魅せられるようになったのは、写真家の星野道夫氏の影響が大きい。大学時代に星野氏の著者に出会い、「彼が見た世界を自分で経験しないと、次に進めない」と思うほどの感銘を受ける。星野氏と同じように、旅行者ではなく生活者としてアラスカに住みたいと願ったという。学生ビザを取得しフェアバンクス校の野生動物管理学部に入学。そして星野道夫氏が滞在したことのあるシュシュマレフという村で、アザラシ猟を経験する。星野道夫氏の何に魅了されたのだろうか。
星野さんの時間感覚や自然観に心から共感しました。たとえば、星野さんが挙げていた「自然には“身近な自然と遠い自然”がある」というエピソード。 “遠い自然”は、自分たちの生活に関係ないと思いがちだけれど、遠い自然に流れる時間や風景を想像できるだけで、身近な自然に対する見方が深まり、今自分が目にしている風景が違って見える、という話です。
春山さんが共感したのは、星野道夫氏の珠玉のエッセイ『旅をする木』に収録されている「もうひとつの時間」という文章の次の一節だ。