論点を定めることで、特許分析がアクションにつながる
もう1つの事例として、新規事業の具体策として「ある会社に出資したいという会社」の取り組みが紹介された。出資の決裁をとる必要があり、その資料の中で他社と比較して技術力を解明するために、特許分析から補完する材料がほしいという問い合わせだった。
そこでDBJでは保有する特許に関する技術領域を特定し、要望に従って図表を示したところ、平均的な特許価値は高くとも、技術分野を特定していくと製品設計などに依拠した技術が多いことが明らかになった。買収後のプロセスを想定すると、「出資した後に本体の事業部門と連携をさせるのか」「連携先の部門に出資の意図をどう伝えるか」などの論点がでてこなかった。つまり、得意分野はあるもののカバーできていない部分について、出資した会社が技術を持っていれば望ましい。持っていなければ、この論点設定ははじめからずれているという疑問が生じる。
佐無田氏は、「次のアクションにつなげられなければ、分析をしたところで意味がない。まずは論点が決まっていなければ、技術をどうモニターするのかといった取り組みにつながらない。分析して答えが出るのではなく、その先の実行フェーズまで想定したうえで分析を行うことが重要」と語った。
そこで製造工程に合った技術に分類し、対象会社の得意分野をマッピングし、出資は本当に今考えるものなのかと疑問を呈した。結果として取り組みは後に頓挫することとなり、その原因として、当初の論点出しの際に業務への理解が狭く、十分に議論ができていなかったことが大きいと考えられた。
そして知財分析の4ステップの図を示し、「Phase1と2については、今後はAIによる省力化が期待される。しかし、Phase0で論点を特定することについては人間にしかできない。問題をどう把握し、分析した材料をどう使うか、考え尽くしていくことが大切」と繰り返して強調した。
そして最後に、佐無田氏は「当社における知財理解についてはまだまだ努力の余地がある。それでも論点を掘り下げる材料とし、一緒に考えていく環境づくりがこうした取り組みを広げる上で重要と思われる」と述べ、「会社規模の最小にかかわらず、社会課題に対する解決策を論点とする環境づくりを進めていきたい」と力強く語り、まとめの言葉とした。