「論理的思考」にも限界がある
なぜ論理的思考が必要なのか?
論理的思考は錯綜する情報の中で、適切なものを選び理解することを可能にする。だから、レイヤーに関わらず、意思決定の際に重宝され、その決定を他者に筋道立てて説明するためにも使われている。
例えば、中国の経済が落ち込んでいるという事実、そして自社が最近中国に営業所を作った事実、さらに今度大きなイベントを開催するという事実があったとします。これらのことから何が言えるんだろう、って理解するのは自分で考えないといけない。
ビジネスパーソンは多くの情報に触れるだけでなく、それらをつなぎ合わせて、一つの結論を導く力が必要だ。そして、そこから何らかの行動が生まれるのなら、上司や同僚に説明する必要性が生まれる。これらを実現するのが論理的思考だ。
論理的でも間違える?
確かに、論理的思考はこれからの行動を決めることができ、またそれを人に説明することができるが、万能ではない。時には、誤った結論を導くし、感覚的な批判にさらされる事もある。
例えば、岩田氏が以前務めていたコンサルティング会社は、過去のデータからトヨタのプリウスや楽天のECビジネスは失敗するだろうと予想していた。また、論理的に組み立てた社内プレゼンでは「セクシーじゃない」「シズル感が欲しい」など、感覚的に否定されることも少なくなかった。
当然だが、論理的思考は「論理で説明がつかない」ことを導くことができない。しかし、ビジネスの現場では論理では説明がつかないことが求められることも多い。だから、論理だけではなく直感的思考が必要となる。
脈絡はないがデタラメでもない「直感的思考」
直感については科学もまだ解明しきれていない。だが確かに存在しイノベーションを支えてきた。時に論理だけではビジネスは立ち行かないが、その逆境を直感を頼りに打ち破ることができる。まずはその直感について概説したい。
直感的に判断すること
岩田氏は直感を「その時の状況や目的に沿って、過去の経験や様々な情報をもとに、論理的なプロセスを経ずにたどり着いた結論です。要するに、あまり深く考えずに出てきた結論」と定義している。
例えば、救急救命士という仕事があります。彼らは駆けつけると、トラブルのある人がいます。その状況でどういう判断をしているかというと、いくつかの症状があるから脳梗塞だろうとか判断しているんじゃありません。彼らはパッと脳梗塞だろうと判断して、それが正しいか確認して、それが正しくない場合は、他のものを考える。こういうことをしているそうです。
直感的思考がビジネスで活躍するシーンの一つ目が、「判断」だ。マーケティングをもとに論理的に組み立てた企画がいつもヒットを生み出すとは限らない。むしろ、見当違いなアイディアを導くこともある。だが、そういったアイディアは企画の段階で「なんかダメそう」と論理的ではない批判が出ていることも多い。
この説明がつかない直感的な判断が、企画や事業立ち上げを成功させる一つの指標になる。消費者は深く考えて商品を手に取るわけではない。多くは「なんとなく」買ってみることが多い。だから、直感的に良いと思うものは消費者への訴求力があるということでもある。
ただし、直感的な判断をした上で、それを共有するためには論理的な説明が求められる。バランスが重要なことは言うまでもない。
論理では導けない違いを直感でつくる
特に企画関係の仕事をしている人は、結構この直感を発想に使ったほうがいい。理由はシンプルで、論理的に導くと他とあんまり変わらないものになりがちだから。
論理的思考は、多くの人が同じ結論にたどり着くことができるという利点をもつ一方で、それは企画立案においては「似たり寄ったりになる」というデメリットに転じやすい。直感は目の前の状況と過去の経験が、閃きの瞬間に唐突に結びつく。そこには筋道もフレームワークもない。だからこそ、誰にも真似できないオリジナルなアイディアが生まれる。
だが、企画を通すために直感ではなく論理的な説明を社内で試みる必要があり、その時の注意として岩田氏は「組織を通っていくうちに、色んなものって論理で判断されることが多いので、冒頭のアイディアが丸まっちゃうんです。」と語る。実際、アイディアが丸まった結果、当初企画されていたものと180°方向転換していることも珍しくない。
直感で発想するだけでなく、それを殺さないためにも判断においても直感は重要だ。だが、論理的思考と同様に、直感的思考もまたいつも正解を導くとは限らず、失敗に終わることもある。だから、どちらかに偏るのではなく、どちらも矛盾させずに機能させるのが、いいアイディアを生み出すコツだろう。
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