FinTechとは、個をエンパワーメントする思想でつくる金融サービス
FinTechとは、FinanceとTechnologyを掛け合わせた造語で、テクノロジーを駆使して、金融サービスを生み出したり、見直したりする「金融×IT」分野でのサービスや一連の動きだと言われいる。
サービス領域は、家計簿・会計ソフトから、貸付、決済、銀行インフラ系など、多岐に渡る。国内の代表的なサービスとしては、クラウド会計ソフト「freee」、資産管理ツール「マネーフォワード」、決済サービスの「コイニー」などが挙げられ、2015年現在は、大手の金融機関の市場参入も見られる。三菱東京UFJ銀行はビジネスコンテストを開催した。オープンイノベーションの一環としてのハッカソンの開催など、大手金融機関も取り組みに積極姿勢をみせている。
最近では、金融庁はFinTechに関する法制度も含めた環境整備や規制緩和の検討を進め、経産省はFinTechの研究会を立ち上げている。まさに関心の高まるこの分野。
FinTechとは、そもそもなんのか?
今回のパネルディスカッションでの最初のテーマとなったのは「FinTechとはなんなのか?」という、そもそもの話。FinTechによって社会がどう変わるのか、どんなベネフィットを持っている領域なのか。このテーマで最初に口火を切ったのは、決済サービスを提供し始めて3年目となるコイニー株式会社の代表取締役社長佐俣奈緒子氏だ。
FinTechは、本質的にインターネットの思想からつくる金融サービスのことだと思っています。では、インターネットの思想とは何かというと、個をエンパワーメントする思想。つまり、権限委譲された個人が力を持ち、民主的な活動を加速する取り組みがインターネットの本質だと思っています。その思想でつくられた金融サービスがFinTechと呼ばれるもので、我々自身もそういうサービスをつくっていきたいなと思っています。
この考えには、株式会社お金のデザイン取締役COOの北澤直氏も同意する。
佐俣さんがおっしゃった“個をエンパワーメントする”ということ。FinTechとは何かに答えるとしたら、この表現に尽きると思います。ユーザーの立場から考え、テクノロジーが代替できるものに限らず、やるべきことってもっとあるんじゃないかという、イノベーティブな発想にもとづき現状を革新していくところに本質があるのかなと思っています。
株式会社マネーフォワード取締役でFintech研究所長でもある瀧俊雄氏も、同じ立場でさらに踏み込んで、FinTechを“面倒見のいいオカン”と表現する。
ただツールを提供するだけではなくて、面倒見のいいオカンになってあげる。これしなさい、このまま放置しているとひどい目にあうよなどの、“お節介”まで含めて面倒をみてくれて、ユーザーの「お金まわり」で正しい解決策をみせていくことが大事な側面かと思っています。
それでは、解決すべき「顧客の課題」とは何なのか? FinTech領域で事業を考える場合に重要なディスカッションが続いた。