KPMGコンサルティングは、日本の企業およびブランドの顧客体験に関する調査の結果と、顧客体験の構築・向上において重要な要素やトレンドの変化などをまとめたレポート「2024年 生活者に支持される顧客体験に関する調査」を発行した。
同レポートは、KPMGがブランド調査を実施する中で定義した、次の要素から評価・集計している。
Six Pillars(優れた顧客体験を構成する6つの要素)
- パーソナライズ:顧客一人ひとりのニーズや状況に応じたサービスや体験を提供する
- 誠実性:企業に求められる責任を全うし、顧客に信頼される
- 親密性:顧客と感情的につながり、親密な関係性を築く
- 期待の充足:顧客の期待に応え、さらにはそれを超えるサービスを提供する
- 利便性:使いやすく、ストレスや労力を感じさせないサービスを提供する
- 問題解決力:サービス利用で生じた問題や不満を解消し、顧客のマイナス感情をプラスに変える
CEEスコア
- バリュー(価格に見合った価値)
- 推奨度
- ロイヤルティ(今後も使い続けるか)
-
各タッチポイントチャネルの満足度
- など
日本におけるCEEスコアの全体平均は2年ぶりに低下
2024年の日本の調査対象ブランドの平均CEEスコアは、前回比0.08ポイント減の6.79となった。Six Pillarsのすべての要素でCEEスコアが前回比で低下しており、特に「パーソナライズ」「問題解決力」「誠実性」の低下が顕著に表れている。
CEEスコアの全体的な低下には、顧客体験における生活者のニーズや期待と、実際に企業・ブランドが提供するサービスとの間でギャップが生じたことが影響したと考えられるという。
顧客体験における「パーソナライズ」の重要度の高さは継続
Six Pillarsの6つの要素の中で、過去4年間にわたって最も重要度が高いと評価されたのは「パーソナライズ」で、生活者が自分自身のニーズや価値観、ライフスタイルに最適化された顧客体験を求めていることがうかがえる。
また、2021年からの3年間に「誠実性」と「親密性」の重要度が増す変化が見られ、今回の調査においてもそれぞれ順位を維持しており、企業・ブランドに対する信頼や共感などの情緒的な価値を大切にする価値観が定着した可能性があるという。
一方、他の要素に比べて重要度が低く評価されているのが「利便性」と「問題解決力」で、これら2つの要素が生活者にとっては商品・サービス利用における当然の要素と捉えられており、それ以上の体験価値を求めることの表れと考えられるとのことだ。
優れた顧客体験を提供するブランドは高評価を維持する傾向
今回の調査における日本のトップ10ブランドには、非日常を演出するエンターテインメントリゾートや、ブランドのフィロソフィーを体現し続けるスポーツブランド、高級感を味わえるラグジュアリーホテルなどが並んだ。トップ10のブランドの半数は、前回の調査も10位以内にランクインしているほか、残りのブランドについても、前回の調査で比較的上位にランクインしている。
優れた顧客体験を提供するブランドは、昨今の変化の激しい環境下に置かれながらも、継続的に顧客体験の向上に取り組んだ結果、高評価を獲得していることがうかがえる。
生活者のニーズと期待値の適切な把握が優れた顧客体験のカギ
CEEスコア上位10のブランドと11位以下のブランドのSix Pillarsの平均CEEスコアで最も差が大きいのは「期待の充足」で、次いで「CEEスコアにおける重要度」が高いと評価された「パーソナライズ」「親密性」「誠実性」が続いた。
生活者の顧客体験に対する期待が相対的に高まる中、上位10のブランドは限られたリソースの中で実現し続けていることがうかがえる。また、上位10のブランドは、生活者のニーズ・期待の理解だけではなく、その優先順位も把握したうえで顧客体験、ひいては商品・サービスの向上に取り組めているという。
業界別の概況
今回の調査では、「自動車」が最も高い評価を得た。自動車業界は前回の調査から対象に追加され、前回の2位から順位を上げ1位を獲得。2位は「娯楽・レジャー」(昨年は1位)で、3位には「小売(食品以外)」(昨年は3位)となった。一方、「物流」は昨年の6位から順位を大きく下げ9位となっている。
「自動車」「娯楽・レジャー」「小売(食品以外)」の上位3業界は、Six Pillarsの全要素でのスコアが全体平均よりも高く、「自動車」はとりわけ「問題解決力」と「親密性」が、「娯楽・レジャー」は「パーソナライズ」と「親密性」が、「小売(食品以外)」は「パーソナライズ」と「期待の充足」の評価が高い点が特徴として挙げられる。
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