新たなる経営管理へのチャレンジ
ここまでで紹介した構造を踏まえつつ、これらの要素を実際の経営管理プロセスにどのように組み込んでいるのか、先進企業の事例を通じてご紹介します。
1つ目は、事業別の「競争力の源泉」を把握したKPI再考を進めている事例です。たとえば、業界問わず多くの企業が「モノからコトへ」「体験価値の重視」といった事業転換を掲げていますが、その実現のためには従来とは異なるケイパビリティの強化や資本の増強・配分や事業活動上重視すべきKAI(Key Action Indicator)が適切に設定されるべきです。しかし、具体的にどのようにシフトしていくべきかが不明瞭なままという企業も少なくありません。こうした課題に対し、冒頭でご紹介したサイクルを実現させ、企業価値向上までの流れを事業ごとに整理し、KPIの再考を進めた事例があります。この事例の成功ポイントは主に3つありました。
1.顧客に選ばれ続けるための価値を定義(「Customer Value」)
- モノからコトへの転換において、「顧客に提供すべき価値とは何か」の定義を明確にする。
- そのうえで、顧客に選ばれたことを示す成果指標を設定する。
2.価値提供のための事業活動の見直し(「Value chain&Operation」)
- これまでの事業活動の継続に加え、新たに必要な行動計画を追加
- さらに、それらの事業活動の進捗や品質管理をどのように測定するかを検討し、設定する。
3.競争力を支えるケイパビリティの明確化(「Capability」)
- 効率的かつ効果的な事業行動の実現に必要なスキル・マインドセットを持つ人財の採用計画、技術・特許・ノウハウの整備、社内外を含む最適な体制構築を検討する。

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これらのポイントを押さえて、各事業の現状と目指す姿に基づいて必要な要素を整理し、指標を活用して検証することで、「どの資本や活動を組み合わせることが、自社の競争力の源泉となり得るか」を特定できます。この洞察をKPIとして設定し、経営管理プロセスに組み込むことで、企業価値の向上を戦略的に推進できます。