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帝国データバンク、相互関税が日本経済に与える影響を試算 実質GDP成長率は0.5ポイント低下と予測

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 帝国データバンクは、米国による相互関税の適用が2025年度の日本経済に与える影響について、TDBマクロ経済予測モデルを用いて試算した。

  4月3日、米国のトランプ大統領は「相互関税」を実施する大統領令に署名。第一弾として、4月5日から各国・地域にベースライン関税として関税率が一律10%引き上げられた。その後、日本や中国、EU(欧州連合)など米国の貿易赤字額が大きい57カ国・地域には、4月9日午後1時からそれぞれ上乗せ関税率が課され、ベースラインと上乗せ関税率を合わせた相互関税率は、日本24%、EU20%、中国34%などとなっていた。しかし、その13時間あまり後、トランプ大統領は同日発動したばかりの上乗せ部分について、日本を含む一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表。16日時点では10%の一律関税が適用されている。

相互関税、2025年度の実質GDP成長率を0.5ポイント下押し

 同社は相互関税の影響について、3つのシナリオに分けて日本経済の見通しをTDBマクロ経済予測モデルで求めたという。

【シナリオ1】90日間相互関税10%が続き、91日目からすべての対象国で当初の関税率に戻るケース

 2025年度の実質GDP成長率は、相互関税の発動により従来予測から0.5ポイント低下し、前年度比+0.7%になると予測した。

 中でも輸出の伸び率は、従来予測の前年度比2.7%増から同1.0%増へと、1.7ポイント低下すると見込まれる。特に自動車・同部分品は、2024年に日本の対米輸出額21兆2948億円のうち7兆2575億円、構成比34.1%を占めていたが、4月3日から個別品目関税として25%の追加関税がかけられている。日本の主要輸出品であり、裾野が広い自動車関連への高水準な関税は、輸出全体を押し下げる最大の要因になるとしている。

 輸出の伸び率低下にともない、企業の設備投資も下押しされる。民間企業設備投資の伸び率は、従来予測の同1.8%増から同1.4%増へと0.4ポイント低下する見通しだという。世界経済の先行き悪化が懸念されるうえ、米国経済における不透明感の高まりを受け、企業は設備投資判断を慎重にせざるを得ないと述べた。関税を避けるために米国内での生産拡大を進める企業も現れてくると見られ、日本国内での設備投資を抑制する要因の一つとなりそうだとしている。

 輸出や設備投資に対する影響は企業の利益に直結することから、民間法人企業所得(会計上の経常利益に相当)は、従来予測の同1.8%増から同0.1%減へと1.9ポイント低下すると予測。民間法人企業所得はコロナ禍の2020年度を底に増加基調にあったが、トランプ関税の発動によって5年ぶりに減少へと転じる可能性があるという。

 こうした状況は、労働者の所得にとってマイナス材料であり、個人消費を下押しする要因となる。そのため、民間最終消費支出は同1.0%増から同0.7%増へと0.3ポイント低下する見込みであるとしている。GDPの5割超を占める個人消費が伸び悩むことによって、力強さに欠ける日本の経済状況はさらに厳しさを増していくと見られる。

 倒産件数は2024年度に1万70件と11年ぶりに1万件超となったが、このような状況のなかで2025年度には1万574件(前年度比+5.0%)と、従来予測より339件増加すると見込まれる。そして、失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると予測されるという。

【シナリオ2】相互関税10%が継続するケース

 2025年度の実質GDP成長率は、相互関税10%が課せられることにより従来予測から0.3ポイント低下し、前年度比+0.9%になると予測した。2025年度のうち9カ月にわたり相互関税がシナリオ1より低くなるため、成長率はシナリオ1より0.2ポイント分、落ち込み幅が緩和すると見られる。

 輸出の伸び率は同1.4%増となり、従来予測より1.3ポイント低下すると見込まれるという。ただし、シナリオ1と比較すると伸び率は0.4ポイント上回るとしている。

 民間企業設備投資の伸び率は同1.6%増と、従来予測より0.2ポイント低下する見通し。シナリオ1との比較では、伸び率は0.2ポイント上回るとのことだ。

 民間法人企業所得は同0.1%増となり、わずかにプラスを維持できると見られる。シナリオ1ではトランプ関税の発動で減少へ転じる可能性が示唆されたが、相互関税10%が継続する場合は、ギリギリ5年連続で増加すると見込まれる。

 こうした状況を受け、民間最終消費支出は同0.8%増へと従来予測より0.2ポイント低下すると予測される。シナリオ1と比べると、減少率が0.1ポイント縮小すると見られる。

 倒産件数は1万489件(前年同比+4.2%)と従来予測より254件増加すると見込まれ、失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると予測されるとした。

【シナリオ3】<参考>4月3日発表の相互関税24%(日本)が継続するケース

 2025年度の実質GDP成長率は、相互関税24%が続くことで従来予測から0.5ポイント低下し、前年度比+0.7%になると予測。輸出の伸び率は同0.8%増、従来予測より1.9ポイント低下すると見込まれる。民間企業設備投資の伸び率は同1.4%増と、従来予測より0.4ポイント低下する見通し。民間法人企業所得は同0.2%減となり、従来予測より2.0ポイント低下すると見られる。さらに、民間最終消費支出は同0.7%増と従来予測より0.3ポイント低下すると予測されるとした。

 倒産件数は1万687件(前年同比+6.1%)と従来予測より452件増加すると見込まれるという。そして、失業率は2.6%と0.1ポイント上昇すると予測される。

 シナリオ3は、4月3日に発表された当初の相互関税が実行された場合の予測。その後、数日の間にさまざまな政策修正が行われたことから、少しずつその影響は和らいでいると言える。

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