問題解決は場合により「組織文化のデザイン」まで辿り着く
――越境や超越の視点をもって課題に気づくこと、それが案外難しかったりします。どのようにして、課題に気づき、どう企業に提案するのでしょうか?
プロジェクトによってアプローチはまちまちです。例えば、あるメーカーから「独自の先端技術があるから、それを活かせる製品の企画・開発やビジネスパートナーのピックアップをしてほしい」という依頼をもらったことがあります。経営者やマーケ、現場などさまざまな人にインタビューを実施し、多くのワークショップや検討を経て最終プレゼンを行ったのですが、従来のお題に対する答えとしてのプレゼンとは別の提案もしました。「量産製品とは別に、あるスペックを極端に高めたコンセプチュアルモデルを使って、ショーケースにしませんか」という提案です。
なぜそのような提案をしたかというと、経営層にとっては未来を託そうとしている重要な技術であっても、実は現場の人は、それと同じ熱量を共有できていないのでは、と感じたからです。現場のエンジニアの方々は、量産化に向けた厳しいスペック改善を課されるがあまり、大きな夢を描いたり、興奮したりといった心の動きを持てずにいる。完全な「自分ごと化」ができていないのでは、と思ったんです。このプロジェクトの課題は、実は新たなビジネスを提案することではなく、「社内での盛り上がり、エキサイトメントを高める」ことなのでは、とそのとき感じました。