新規事業の失敗史から見えた成功のカギ
新規事業を推進するための企業独自の「型」とは、以下の要素を明確に定義したものです。
- 新規事業の目標設定:どのくらいの規模感、時間軸、事業領域を狙うのか
- 新規事業判断の意思決定プロセス:誰が、どのような基準(Go/No Go要件)で判断するのか
- 組織の“癖”:リスク許容度や意思決定のスピード感をどう捉えるか
- 自社の強み/弱み:活用できる技術、オペレーション、営業網などの強みは何か

これらを事前に定義し、現場と経営が共通認識を持つことで、アプローチや評価軸が定まり、新規事業の検討プロセスに明確な“前進感”が生まれます。特に1~3は必須であり、4を固めることで、さらに成功確率は高まります。
たとえば、「5年以内に100億円規模の事業を創る」という目標に対し、1・2周目では前提条件がないまま「どんな事業で?」という議論が延々と続きました。しかし「3周目」では、「100億円規模の事業を創るための前提条件」が「型」として定められています。そのため、対象市場、顧客課題、ビジネスモデル、リスク、そして勝ち筋までを、客観的かつ建設的に議論できるようになるのです。
そして最も重要なのは、この「型」は企業ごとに異なるという点です。過去の経営判断や新規事業の経緯を洗い出し、いわば「自社のOS」の特性や「癖」を理解しなくてはなりません。
また、せっかく「型」を作っても、例外を認め始めると形骸化してしまいます。それを防ぐには、「型」を運用する人材の育成、意思決定プロセスの徹底、定期的な見直しの仕組みも併せて整備することが不可欠です。本連載では、この「型」の作り方や人材育成についても詳述していきます。
「現場と経営のギャップ」は正しく埋められる
新規事業は偶然の産物ではありません。プロセスを整備し、再現性を持って実現できる。それが、私たちが提唱する「型」作りの重要性です。
新規事業の停滞を招く「経営と現場のギャップ」。本連載を通じてその正体と解決策を双方に提示し、両者が歩み寄れる環境を築く一助となれば幸いです。
次回以降は、以下のテーマでさらに深掘りしていきます。
- 第2回:新規事業における現場と経営のギャップ
- 第3回:ギャップを埋めるための組織別のマネジメント
- 第4回:組織として新規事業の再現性を高めるための「ビジネスプロデュースCoE」の役割
現場で新規事業開発に携わる皆さんが、本連載を通じて自社だけの「型」と「正解」を見出し、再現性の高い事業創造を実現できることを願っています。