価値ライフサイクルは「顧客」と「価値提案」が交わる
オファーの最後の属性は、「価値ライフサイクル」です(図7)。価値ライフサイクルとは、価値提案に対して顧客が接する全てのステージを指すものです。顧客バリューチェーン、消費チェーン、バイヤーエクスペリエンスサイクルなどと呼ばれることもあります。
図は、価値ライフサイクルの各ステージにおいて優位性をもっている企業、あるいはそのステージに事業を集中している企業の例です。ハンバーガーのように価値ライフサイクルが短いものもあれば、自動車や法人向けの機械設備のように長いものもありますので、これを参考に作成してみていただければと思います。
競合比較を可視化する「戦略キャンバス」と「価値マップ」
さて、価値提案やオファーの属性を定義し終えたら、「戦略キャンバス」や「価値マップ」に展開してみましょう。競合他社とどのように違うのかを、視覚的に確認することができます。「戦略キャンバス」はブルーオーシャン戦略で活用されるツールの1つであり、横軸には価格および分解された主要なオファー要素、縦軸には各オファー要素の価値レベルを置きます(図9)。前回、価値提案の価値コンセプトは「名は体を表わす」と申し上げましたが、サウスウエスト航空の「空飛ぶバス」という価値コンセプトは、この図を見れば誰もが納得するでしょう。
「戦略キャンバス」を作成するに当たって2つポイントがあります。1つ目は、価値提案を構成するオファーは何かを明確にすることです。2つ目は、ターゲットとする顧客の立場から価値レベルを客観的にプロットすることです。各オファー要素の価値レベルがおしなべて平均以上であったとしても、競合他社と近似しているのであれば危険信号です。つまり、顧客から見えれば「どれも大して変わらない」というイメージを持たれてしまいます。
次は「価値マップ」です。価値マップでは、横軸には価値提案もしくはオファーの最も基本的な特性、縦軸には価値レベルを置きます(図9)。プロットした円の大きさを市場シェア、売上、顧客数などにすれば3次元グラフとなります。ハーレーダビッドソンは、ターゲット顧客とのブランドを通じた信頼価値が排気量に対する価格プレミアムを維持している一方で、ザラ(ファッションブランド)は、バリューチェーンの効率化と高速化によって競合他社よりも高いブランドイメージを低価格レベルで実現していることが想像できます。注2)