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「どう予測するか」ではなく「どう決めるか」が競争優位に 最適化AIで合理的な一手を導くコツ

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最適化AIで合理的な一手を導くコツ

 最適化AIの導入は、意思決定の仕組みが変わることを意味します。そこで、経営と現場をつなぐために必要なのは 、数理モデルを構築する技術だけではありません。「現場との信頼関係」と「経営層への説得材料」この両輪が成功を左右します。ここからは、現場で数多くのプロジェクトを推進してきた筆者の経験から、プロジェクトのリアルな進め方を紹介しましょう。

1.目的を「お金」で定義する

 最初のステップは「会社として何を達成したいのか」を明確にすることです。売上を伸ばすのか、コストを減らすのか、人員を効率化するのか。ゴールを曖昧にしたままでは、最適化モデルが方向性を失います。さらに、その目的をお金に換算することがポイントです。

「このモデルを導入すれば年間5億円のコスト削減」
「広告予算配分を最適化して利益を3億円増やす」

 これらの数字は、経営層の意思決定を一瞬で促します。

2.変数を見極める

 最適化では「変えられるもの=意思決定の変数」を見極めます。物流ならルートや順序、人員配置ならシフトや勤務時間が対象ですが「トラックの台数を倍増」など、非現実的な変数は除外します。変数を整理することが、モデル設計の出発点です。

3.制約条件を洗い出す

 最適化における最大の壁は「制約条件の徹底的な洗い出し」です。

・労働時間の上限
・車両の積載量
・暗黙のルール(「この人とあの人は一緒に入れない」など)

 このような情報は、会議で「ルールを教えてください」と担当者に聞いても出てきません。だからこそ現場に入り込み、実際にオペレーションを体験し、人と雑談を重ねることが必須なのです。

 場合によっては現場に一定期間出向するなど、関係構築のフェーズを初期に経験することで、後の効率は劇的に変わります。画面越しの会議では得られない情報が、リアルな場での信頼関係から生まれるためです。

4.スモールスタートでPDCAを高速に回す

 最初から全社導入を狙うと失敗します。配送なら1エリア、シフトなら1店舗と小さく始めて「早く結果を見せる→現場と対話する→修正する」のサイクルを回すことが成功の鍵です。

5.投資対効果を数字で語る

 最適化AIの強みは「配送コストを年間○億円削減」「残業コストを△%削減」など、結果を金額で示せる点です。最適化モデルをシミュレーションのために用いれば、戦略立案にも役立ちます。「新しい倉庫を建設した場合、投資回収に何年かかるか」といった問いにも、最適化AIは答えを出せるからです。

まとめ

 最適化AIは、単なる自動化ツールではありません。それは「企業の意思決定を科学し、属人性を排除し、再現性を持たせる仕組み」です。この仕組みを機能させるためには、数理の力と現場の知恵を結びつけ、信頼を築きながらプロジェクトを進める姿勢が欠かせません。意思決定の未来はAIだけでなく、人との協働の上にあります。

 DXの次のテーマは「どう決めるか」です。複雑な制約、膨大な選択肢、加速する変化を背景に最適な判断を下す営みは、人間の能力を超えています。意思決定を科学し、利益を最大化する“頭脳”を企業に備える──その頭脳こそが最適化AIです。未来を読むAIから、未来を選ぶAIへ。次の競争優位を生むのは、意思決定のモデルを変えた企業です。

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この記事の著者

梅田 龍介(ウメダ リュウスケ)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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