「仏作って魂入れず」だった新人時代
「経営企画はどのような部署ですか?」そう問われて即答できる人は多くありません。他部署の担当者にとっては「エクセルで数字と格闘している部署」「多忙な時期に予算提出やコスト削減を迫ってくる部署」「『DX推進』『ESG投資』『生成AI活用』など、雑多なプロジェクトを任されている部署」といった断片的なイメージが強く、全体像は見えにくいものです。

経営企画部門に所属する担当者でさえ、業務内容は把握できていても、その本質的な意義を理解できていないケースが少なくありません。実は私自身もその一人でした。
新卒で大手化学メーカーに入社した私は、経営企画を担う部署に配属されました。日を重ねるうちに業務は何とかこなせるようになりましたが「なぜこの業務が必要なのか」を頭では理解できるものの、腹落ちには至りません。そのため、意思決定に資するほどの深い資料が作れず、先輩から厳しく叱責されることもありました。
今振り返れば、当時の私の仕事ぶりが「仏作って魂入れず」の状態だったとわかります。「予算と実績に差がある」という現状報告だけでは意味がありません。経営企画に期待されていたのは、その差異の原因を分析して特定し、次の意思決定を促すことだったのです。
経営陣の「脳」を外部化した部門
そもそも、社内に経営企画部門が生まれるのはいつでしょうか? 創業期にはまず存在しませんし、成長してもしばらくは立ち上がらないことがあります。実際、私の所属するDIGGLEは従業員数が100名を超えていますが、経営企画部門はまだ存在しません。
しかし、企業が成長を続ければ必要な瞬間がいずれ訪れます。必要な瞬間とは、従業員の増加や事業の複雑化によって、経営陣が従来のように意思決定できなくなったときです。
創業期は経営陣が全てを担いますが、事業規模の拡大にともないセールス、マーケティング、開発などの職能が分化します。事業が多角化するにつれ、売上・リソースの管理機能が分化し、事業部に権限が委譲されます。そして最後に、各職能や事業部では担えない全社戦略立案機能が分化します。この機能を担うのが経営企画部門です。
以上の結果、経営陣には絶対に切り離せない意思決定機能のみが残ります。経営企画部門は経営陣に代わって考える、いわば経営陣の脳を外部化した部署なのです。