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AI時代の両利きの経営

Agentic AI同士が交渉し、新たな経済圏を創る──NECが描くAIの進化と日本企業の勝ち筋とは

ゲスト:日本電気株式会社 森永聡氏、千葉雄樹氏

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なぜ「データ共有」ではなく「自動交渉AI」なのか

小宮:フェーズ2(社内)とフェーズ3(企業間)の違いは、社内外の枠を超える以外にもあるのですね。

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株式会社d-strategy,inc 代表取締役CEO 小宮 昌人(こみや・まさと)氏
東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授、明星大学 非常勤講師。国内外のコンサルティングファームを経て現職。データ戦略(DX、AI、SCM、CRM)の専門家として、大手企業のアドバイザリーや実行支援、人材育成に携わる。アカデミアでもデータサイエンス分野で教鞭を執る。

森永:技術要素が全く違います。フェーズ2は社内のため協力が前提で、上からの命令も可能です。

 しかし、フェーズ3は別会社のエージェント同士で協力は前提でなく、命令もできません。この状態でどう自律的にコミュニケーションし任務を果たすか。これが非常に難しい。

小宮:企業間連携というと、一般的には「データ共有」というアプローチが思い浮かびます。

森永:そこが重要な点です。多くのITコンサルタントは「関係者でデータを共有しましょう」と提案します。しかし、既存のデータ共有アプローチは、参加者の「内部情報開示」や「自己決定権の剝奪」を前提としていることが多く、自由主義経済では受け入れられません。

 たとえば、「納期を2日遅らせてくだされば、原価が半分になる」という製造業の内部事情を、取引先に教える企業はありません。

小宮:確かに、自社の手の内は明かせません。

森永:データ共有アプローチは、現実世界では機能しないのです。そこで、このフェーズ3を実現する最重要技術が「交渉」する能力だとわれわれは捉えています。われわれの「自動交渉AI」は機密情報を開示せず、必要なやり取りだけでWin-Winな合意点を自律的に見つけます。

 先の例なら、原価に触れず「納期を2日遅らせるなら価格を5%値引きします」とAIが提案。相手が承諾すれば、両社に新たな利益が生まれます。

小宮:社内では諦めていた、個別最適化の限界を突破できるわけですね。

森永:そのとおりです。自動交渉AIで「内部最適化・個別意思決定の限界を突破」する。これが自動交渉AIの提供価値です。

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サプライヤーとの調達交渉が「数日」から「数十秒」へ

小宮:自動交渉の具体的な導入効果が出たユースケースを教えてください。

森永:NECグループ会社の部品購買業務で実証試験を行い、サプライヤーとの調整に自動交渉AIを使いました。対象業務は、人間同士で従来「3時間~最大2日」かかっていた納期や数量の調整業務です。

小宮:「AI対AI」が前提ですか?

森永:AI対人、AI対AIの両方を想定しています。実証実験では、買い手(NEC側)に自動交渉AIを入れ、相手(サプライヤー)は人間のままで試しました。AIが標準化されたメッセージを送り、交渉を主導します。

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小宮:相手が人間でも導入できるのですね。結果はいかがでしたか。

森永:人間同士では3時間~2日かかっていた交渉が、AI導入後は平均「1分17秒」にまで削減されました。片側に入れただけで、交渉時間が劇的に短縮されたのです。さらに、自動での合意率は95%に達しました。

小宮:1分17秒ですか。数千分の1ですね。なぜそこまで劇的に短縮されたのでしょうか。

森永:人間同士の場合、見積書を送ってから相手が確認して返信するまでに時間があくと、両方の担当者が「直ちには返事が来ないだろう」と別の仕事を始めてしまい、交渉が停滞するからです。

 片側をAIにするだけで、人間(サプライヤー)が何かを言うと、AIが「もう少し早く納品できませんか?」などと一瞬で応答を返す。これにより、人間側も他の仕事に移る間がなく、その場で交渉が完了してしまう。「即時性」が、片側AI導入だけで絶大な効果を生む理由です。

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爆発的に広がる自動交渉の適用領域

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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