人間と機械を上手に組み合わせやチャネル設計
オムニチャネル・リテイリング、オンラインからオフラインへ(O2O)
近年、オムニチャネル・リテイリングとい米国の小売業界におけるキーワードとなっています。オムニとは「いつでも、どこでも」を意味するもので、スマートフォンやタブレットPC、ソーシャルネットワークサービス、RFID(無線IDタグ)といった技術を駆使し、顧客情報や商品情報をシームレスに統合し、顧客との交流や顧客体験を高めようとするチャネル戦略を指すものです(図9)。
特に、オンライン(スマートフォン上のオンラインアプリなど)からオフライン(実店舗)への誘導しようとするO2O(オンライン・ツー・オフライン)という考え方が、日本でも注目を浴びつつあります。
野村総合研究所の昨年調査によると、O2Oの潜在的な市場規模は22兆円であり、これはオンライン購買額の3倍近いということが、企業の関心を集めているのかもしれません。例えば「スマポ」というサービスは、利用者が移動中にスマートフォンでアプリを起動すると、GPSにより近隣の加盟店が表示され、そのお店に行ってチェックイン操作をするだけでポイントがもらえる仕組みとなっています。
人間と機械を上手に組み合わせる
冒頭でお話ししたとおり、チャネルを顧客との交流を深めるためのフロントオフィスとして位置付けた場合、そのサービスインターフェースは、人間主導型(人間による販売やサービス)、機械主導型(ATMやウェブサイト)、人間と機械の混成型(コールセンターやTwitterによる顧客との交流)に分類されます。注2)
スマートフォン、タブレッドPC、GPSやセンサーといったデバイスの進化はサービスの自動化を可能にし、ネットワークの進化はサービス部門の配置転換を促進します。海外のベンダーにコールセンターをアウトソースするといった例は、後者の典型といえるでしょう。
機械主導型のインターフェースは、顧客に対する記憶力に優れ、低コストで大量のサービスを可能にします。一方、顧客との交流において、場の空気を読みながらの丁寧な「おもてなし」という点においては人間がまだまだ勝っています。このようなサービスインターフェースの特性を正しく理解することもチャネル設計の重要な要素の1つです。
チャネルと購買サイクルのマトリクスを活用しよう
整合性のとれたチャネル設計となっているかどうかを確認するためには、チャネルと購買サイクルのマトリクスを作成することをお奨めします。図10は、クリック&モルタル(ネットと実店舗)型の書店チェーンのサンプルを示しています。マトリクスを活用することにより、以下の2つの重要なポイントの検証と分析に役立ちます。
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各チャネル間においてコンフリクトが起きていないか?
たとええば、自社保有のチャネルとサードベンダーチャネルが混在している場合、顧客の奪い合い、同一顧客への異なるオファー提示などの問題が発生する場合があります。これは、マトリクスの縦軸で検証することができます。
- 各購買サイクルの流れに淀みはないか?
そのチャネルリンクの働きは、購買前から購買時へ、購買時から購買後へとターゲット顧客を自然に誘導しているかを確認します。これは、マトリクスの横軸で検証することができます。