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CFO不在の日本企業にFP&Aは根付くのか? 導入の壁を超えるヒント

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フォーキャスティングの精度を上げる方法

萱原:私もフォーキャスティングの重要性をリクルートで学びました。予測精度を上げるためのプロセスが確立されており、リクルートでの学びを2社目や現職でも実践しています。

 上場準備中や上場直後のスタートアップ企業の場合「予実管理」は行っているものの「フォーキャスティング」は行っていないというケースが多いように思います。「予算と実績はあるが、見通しがない」という状態です。

 毎月予実差異分析を行って着地見通しをアップデートするというプロセスは、コーポレートと事業部の双方に負荷がかかります。そのため、関係者がメリットを感じられるインセンティブ設計が不可欠です。たとえば「予測精度が上がれば、事業部で新たな追加投資ができるようになります」「投資アイテムのアロケーションにより、新しいチャレンジにお金が使えます」といったものです。フォーキャスティングのプロセスに積極的に参加してもらえるような仕組みづくりは、私自身がFP&Aとして意識しています。

畠山:フォーキャスティングの精度は、どうすれば上げられるのでしょうか?

萱原:事業に対する解像度を高めることが有効だと思います。「売上-コスト=利益」というPLの上流にある事業KPIの設定とモニタリングが最も重要です。

 たとえばSaaS企業の場合、売上の先行指標であるARR(年間経常収益)が重要な指標であり、一定規模にまで成長するとチャーンレートのマネジメントが不可欠です。事業の成長ドライバーのブレイクダウンと、センターピンとなるKPIの設定。これらを経営陣と議論しながら財務モデルに落としていくことこそが、FP&Aの大事な役割であると思います。

石橋:トップダウンのローリング予測とボトムアップのローリング予測を突合して、事業部長と事業部FP&Aが対話する。そんな場を設定することが、事業戦略を実行するために最も有効なアプローチだと思います。

事業そのものを数字で捉えて価値向上に貢献する

畠山:トップダウンとボトムアップを突合して対話する場は、オペレーションを工夫すればつくれるものなのでしょうか? それともFP&Aのような組織を構築する必要がありますか?

萱原:すぐに着手可能なオペレーション上の工夫という意味では、会議体やモニタリングの場をアレンジすることが重要です。当社では、月次で実績と予算、前月見通しのギャップおよびその要因を経営陣に共有し、ネクストアクションを皆で議論するプロセスを徹底しています。

畠山:最後に、FP&Aの導入を検討する企業に向けてメッセージをお願いします。

萱原:FP&Aは事業そのものを数字で捉え、企業価値・事業価値向上に対してあらゆる貢献をする役割であると私は考えています。コーポレートと事業部など、様々な視点を想像しながらコミュニケーションすることが求められますが、「私はこの事業をこう見るんだ」という強い意思を持つことが一周回って重要だと思います。

石橋:日本企業には二つの壁があると申し上げましたが、それらの壁を一人の組織構成員が変えることは現実的に難しいです。今日のディスカッションをきっかけに「FP&Aとは何か」を「FP&Aプロセス」の面から考えていただけるとうれしいです。この問いが、ひいては「自分がFP&Aプロフェッショナルとして支援する事業部の事業戦略を実行するために、経営管理の仕組みをどのように設計・運営するべきか」を考えることにつながるからです。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(Biz/Zine編集部)(ワタナベ カナ)

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