建設業界を襲う「LCA」と「改正GX推進法」の波
続いて登壇したPwCコンサルティング ディレクターの齊藤三希子氏は、建設業界における具体的な環境関連動向を紹介した。現在、国内では2028年度の「建築物LCA(ライフサイクルアセスメント)」制度化を目指す基本構想が策定されている。
LCAとは、原材料の調達から建設、使用、解体に至るまでの全プロセスで環境負荷を算定・評価する手法だ。「これまで重要視されていた使用時の省エネ(オペレーショナルカーボン)だけでなく、建材製造時に排出されるCO2(アップフロントカーボン)の削減が強く求められるようになります」と齊藤氏は解説する。
さらに、改正GX推進法による「GX-ETS(排出量取引制度)」の対象企業の参加義務化や、WBCSDによる資源循環(サーキュラーエコノミー)の度合を測定・評価する指標「CTI(Circular Transition Indicators)」の公表など、建設業界を取り巻く規制とビジネス機会は急速に多様化している。
こうした複雑な課題に対し、PwC Japanグループが提示する解が、新サービス「ホリスティック評価サービス)」である。本サービスは、CN(脱炭素)、CE(資源循環)、NP(自然再興)、ウェルネス(人権)の4領域を、約160の指標を用いて可視化する。
「ホリスティック評価サービスの最大の特徴は、サプライチェーンを数段階遡って環境負荷を可視化し、それを『貨幣価値』として換算できる点にあります」と齊藤氏は語る。
たとえば、アルミ材をプラスチック材に代替した場合や、バージン材を再生材に変更した場合のトレードオフとシナジーを定量的にシミュレーションできる。これにより、経営層は「コストは上がるが、社会・環境価値を含めたトータルな競争力はどう変化するか」という問いに、確かな根拠を持って答えられるようになるのだ。
説明会では、このサービスの活用例として、大林組によるケーススタディも併せて紹介した。
読者への示唆:2026年は「個別最適」からの決別を
PwC Japanグループの両氏が強調したのは、個別最適から「全体最適」へのシフトだ。「自社だけで解決できる限界を認識し、複数の企業や組織が同調して投資を行う『エコシステム』の構築が必要です」と屋敷氏は結んだ。
経営企画やDX推進を担うリーダーにとっての示唆は明確である。それは、サステナビリティを「守りの義務」から「攻めのビジネスモデル再考」へと転換することだ。
2028年のLCA制度化を見据えれば、今この瞬間から、原材料の調達先や工法の選定基準を「ホリスティック」に見直す準備を始めるべきだろう。データに基づき、環境・社会・経済のシナジーを最大化させる。その決断こそが、新時代における産業競争力の源泉となる。
(右):PwC Japanグループ サステナビリティリーダー 屋敷信彦氏
