CVCによる投資の真価
小竹:今回の協業では、協業検討が始まった1年後に、我々CVCであるNTTドコモ・ベンチャーズがugoに出資を行いました。CVCが入ったことによる好影響はありましたか? 事業会社であるNTT西日本が直接出資すればよかったのではないかという見方もあると思いますが。
原:もしNTT西日本本体から出資しようとしていたら、これほど早い意思決定はできず、時間のロスを生んでいたはずです。そこをCVCに担ってもらえたのはビジネスにおいて極めて大きかったです。
また、アイリスオーヤマさんとの交渉時にも、「NTTグループのCVCが投資している会社である」という事実が技術力や事業の信頼性の担保となり、話がスムーズに進みました。後ろにCVCがいるugoさんと一緒だということで、同じ土俵に上げていただけたと感じています。
松井:ディープテック企業は、プロダクトを世に出すまでに時間がかかります。本体協業の前に、早い判断で資金を入れてもらえることは、体力が限られるスタートアップにとって命綱です。資金を先に入れ、そこから本体との事業共創へと後押ししてもらえるのは、CVCならではの大きな価値だと感じています。

アセット活用と“人の熱量”が協業を成功に導く
小竹:お二人は今後、このロボティクス事業をどこへ向かわせようとしているのでしょうか。
原:ロボット産業においてNTTはまだグローバルでは視界に入っていない状態ですが、ロボットは間違いなく「次世代のインフラ」になります。それを支えるのは、日本のインフラを支えてきた我々が果たすべき使命です。実績を積み、グローバルで通用するプロダクトを早く作っていきたいと考えています。
松井:技術ができることと、社会実装されることは別です。安全性を担保し、きめ細やかにアプリケーションを作り込む。こうした日本のオペレーションエクセレンスを持つNTTさんと共に事業を作り上げ、海外に出て外貨を稼ぐという戦略が、これからの日本の勝ち筋になると思っています。
小竹:ありがとうございます。最後に、今後オープンイノベーションに取り組む皆様へメッセージをお願いします。
原:大企業の皆様にお伝えしたいのは、「自社のことをよく知る」ことの重要性です。完全に飛び地の新規事業は絶対に失敗します。自分たちが長年培ってきたアセットをベースに事業を作ることが、結果的にマネジメント層を動かす源泉になります。既存事業の延長線上に新規事業があるという意気込みでやっていければ、展望は開けるはずです。
松井:企業同士の協業の根幹は、やはり「人と人との信頼」です。原さんのような熱い想いを持ち、社内の説得や政治的な調整をやりきれる優秀な方と出会えるかが運命を左右します。
同時にスタートアップ側も、大企業の担当者が社内で評価されるよう、成果を目に見える形でプレスリリースを打つなど、表で評価してもらえるアピール戦略を共に考えるべきです。そうしないと、大企業の中ではスタートアップの成果が小さく見えてしまいますから。
小竹:本日は、オープンイノベーションの真髄に触れる素晴らしいお話をありがとうございました。
