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琴坂教授と探る、AI時代の経営学の4つの新潮流──ミドルマネジャーの変容と日本企業の逆転戦略とは

ゲスト:慶應義塾大学 総合政策学部 教授 琴坂将広氏

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「パワーポイント」が戦略を決める? 実践・行動としての経営戦略

栗原:いよいよ本書の核心である第Ⅲ部「4つの新潮流」をお伺いできればと思います。まず一つ目の「実践・行動としての経営戦略」とはどのようなものですか。

琴坂:これは「マイクロファンデーション・ムーブメント」とも呼ばれる、分析レベルを極限までミクロに下げる潮流です。従来の資源ベース理論は「優れた能力があれば勝てる」という大枠は示しましたが、その能力が具体的にどのように組織内で作られているのかという「中身」がブラックボックス化していました。たとえば、近年注目されているSAP(Strategy as Practice:戦略実践論)では、戦略を「組織が持つもの」ではなく「人々が行うもの」として捉えます。

 興味深い研究例を挙げれば、戦略策定におけるパワーポイントの使い方一つが、参加者の認識共有や意思決定の質を左右するという実証研究もあります。単なるツールに過ぎないスライドが、実は組織の認知バイアスを増幅したり、逆に新しいアイデアを殺したりしている。こうした日常的な「やり方(プラクティス)」や経営者の「認知バイアス」を操作可能な変数として捉え、デバイアシング(バイアス除去)技術などを通じて組織能力を強化するのがこの潮流の狙いです。

画像を説明するテキストなくても可

「自社」という枠組みを超えて──多層的境界の戦略とは

栗原:二つ目の新潮流「多層的境界の戦略」は、企業間関係を中核に据えていますね。

琴坂:はい。これはポーター(外部)とバーニー(内部)の二項対立が残した「理論的空白」を埋める議論です。現代のビジネスは、もはや一社の内部資源だけで完結することはありません。エコシステム、プラットフォーム、コミュニティといった、外部でも内部でもない「間(あいだ)」の領域こそが価値創造の源泉となっています。

 これを理論化したのが「関係ベース理論(Relational View)」です。競争優位の単位を「個別企業」から「企業間関係」へと拡張し、パートナー単独では不可能な超過利潤「リレーショナル・レント」の存在を明らかにしました。

 実は、これはかつての日本企業が得意としていた「伝統芸能」でもあります。トヨタの系列ネットワークや三菱・パナソニックの企業集団に見られる「株式持ち合い」や「知識共有ルーティン」は、まさにこの多層的境界を戦略的に活用していた歴史的先例として、今再び世界的に注目を浴びているのです。自社を単独の主体としてではなく、関係性の結節点として再定義することが求められています。

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「ゲームのルール」自体を書き換える──非市場・制度戦略とは

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この記事の著者

栗原 茂(Biz/Zine編集部)(クリハラ シゲル)

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