20世紀にできた「国・企業、労働や人間」を再定義する
入山:
でも、いざ研究の場では、経済学と社会学・心理学の考え方はせめぎあう場合が多くあります。だから、佐藤さんの著作を読んでまず興味を引かれたのは「個人・国家・企業との齟齬」でした。個人としての人間は社会性や認知的なものを尊重する時代になりつつあるのに、いまだに国家や企業は昔ながらの経済学的な価値観で運営されているのかもしれない。それで齟齬が生じているのではないか、というのが佐藤さんの本を読んでの私の勝手な解釈なんですが。
佐藤:
そこはちょっと難しいところでして。というのも、企業も経済合理性だけにかなえばよいとなれば、機械学習やロボットでほとんどの業務が効率化できてしまいます。そうであれば、人間が担うのはエンターテイメント、つまりは楽しみや交流だけになるという見方もできます。でも、合理的でない部分も多分にあって、それがどの部分なのか、どう切り分けるのかとかについて、議論の余地があるでしょう。