“ヨソ者・バカ者・ワカ者”が作り出す「情念」のイノベーションとは?
事業を立て続けに成功させた経営者などにインタビューを行い、自身も研修やコンサルティングによりイノベーター輩出に貢献する井上氏は、イノベーターに共通する特徴を挙げた。
“ヨソ者・バカ者・ワカ者”が組織の中でイノベーションを起こします。リクルートの“ワカ者”が起こした新事業の例としては、1987年に創刊した『カーセンサー』という中古車情報誌があります。この雑誌は、その年の内定者の提案から生まれています。
井上氏がヨソ者・バカ者・ワカ者と呼ぶ「イノベーター予備軍」は、企業で共有されている“当たり前”に疑問を持つ。社内ルールや業界内の商慣行など、既存社員は“そもそも”の部分を問い直すことは少ないだろう。“ワカ者”の新入社員は知らないことが多い分、新たな視点で「お作法」を問い直す。その時に先輩社員から「でも、それがうちの作法だよ」という一言が浴びせられたらどうだろうか。ワカ者の新しいアイデアと気概が消滅していくのが普通であろう。こういった状況は一般的には珍しくないが、リクルートでは次世代に繋がるイノベーションが、今までも脈々と生まれてきたという。その違いは何か?
『根負けをさせる力』があるかないかが、イノベーターかどうかの境目です。
イノベーター予備軍である“ヨソ者・バカ者・ワカ者”が提案する斬新なアイデアは、当然ながらすんなり受け入れられることはまずない。なぜなら、多くのアイデアは長期的な利益をもたらす可能性を持っているが、KPIがわかりづらいからだ。だからこそ投資家からも受けが良くないし、経営陣はそのアイデアに難色を示すだろう。
井上氏は「情念」という言葉で説明するが、イノベーターとなれる“ヨソ者・バカ者・ワカ者”は、アイデアを実現するためなら、時には10回以上も経営陣に直談判するほどの情熱を持つ。そのような「情念」の結果として,経営陣からの承認を受け、「事業投資」という経営資源を獲得して、イノベーションに邁進していく。
では、イノベーターを探し採用さえすれば、そのまま新事業が生まれていくのだろうか。そこには、“ヨソ者・バカ者・ワカ者”の能力を最大化させる管理者の存在と仕組みが必要だ。その役割とはどのようなものだろうか?