「選択」という観点から自分の人生の物語を紡ぐ
シーナ・アイエンガー博士は、インドからカナダに移住した両親のもとにカナダ・トロントに生まれ、その後アメリカに移ったインド系アメリカ人2世である。両親は敬虔なシーク教徒。アイエンガーさんは「両親はアメリカ育ちのシーク教徒らしく将来はエンジニアか医者になり、適齢期がきたら親が選んだ同じシーク教徒の男性と結婚すると期待していたはず。」と笑う。
ところが、幼少時に先天性網膜色素変性であることが判明、高校時代には全盲となる不運に見舞われる。さらには、13歳で父親を突然死で失い、同じ病気でやはり盲目の妹とともに無一文の母親に残された・・・。こう語れば、運命に翻弄されるばかりの人生の物語だ。しかし、アイエンガーさんは、「もう一つ別の物語がある」という。
私の人生は、起業家スピリットに溢れた若者の物語ともいえるのです。
つまり、両親は、自分たちと子供たちのために、より良い生活を求めてアメリカへの移住を選びました。父は『マンハッタンにやってきたときにはポケットに1ドルしかなかったけど夢だけはいっぱいあったんだよ』と、自慢していたものです。私はその夢とともに育てられ、その夢の中に、たとえ盲目でも見える光を見出したのです。
それがチョイス(選択)でした。そして運命や機会という意味では理解しがたい自分の人生を、選択という観点から、見つめてみることを『選択』したのです。
選択の集積がリーダーを作る
アイエンガーさんは、スティーブ・ジョブスやマハトマ・ガンジーら、世界的に有名な指導者たちの写真を見せ、「この人たちを指導者たらしめたものは何か」と、聴衆に問いかけた。生まれつきカリスマ性があったのか、それともたまたま幸運が重なったのか。
こうしたリーダーたちについて、生まれつきの運命、チャンス、選択のどの面から語っても、一面の真実は表せるでしょう。
(選択という観点から見れば)彼らは、機会を捉え、選択をし、その選択を行動に移しました。それが、彼らを特別な存在にしたのです。
究極的には、リーダーが日々やっていることは、選択です。その選択の集積として、リーダーの姿がある。リーダーというのは、様々な選択の累計なのです。
アイエンガーさんは、選択は「人生をコントロールするためのパワフルなツール」であり、選択という行為は、改善して伸ばしていけるスキルだと説く。選択というツールをもっと有効に使えるようになるために、アイエンガーさんが紹介してくれた研究をいくつか見ていこう。