ミッションをビジネスモデルの観点から定義する
前振りが長くなりましたが、今回のテーマであるミッションの定義をしていきましょう(図6)。もう少し具体的にいえば、ミッションとは「我々は何者で、何をし、誰のためにそれをしているのか?」を説明するものです。日本語では使命や存在意義と呼ばれることもあります。ミッションは、ラテン語の動詞mittere(送る)に由来しているそうです。それは、「我々がこの社会に送り込まれた理由は何か?」という存在理由(レゾンデートル)を意味するものです。>
ミッション・ステートメントとビジネスモデル
ミッションは、ミッション・ステートメントという簡潔かつ明瞭な文章で表現されることが多いかと思います。ミッション・ステートメントの書き方を説明するウェブサイトや書籍は数多くありますが、もし皆さんがビジネスモデルを作成しているのであれば、それから抽出していくことをお奨めします。
つまり、①誰に(ターゲット顧客)、②何の価値を(価値提案)、③何の根拠(コンピタンス)をもって提供しているかを簡潔に要約することです(図7)。企業のアニュアルレポートなどを読むと、「私たちは、長年培ってきたXX(コンピタンス)をベースに、XX(ターゲット顧客)の市場にXX(価値提案)を提供すべく活動しております」などと書いてありますよね。
もっとも、企業や団体によっては価値提案を中心とした短い文章でミッションを表現することが多いようです(図8)。これらの事業体に共通する点は、プロダクトやサービスではなく、顧客に提供する価値をベースにミッションを表明している点です。アマゾンは、「インターネットで本や雑貨を販売する」とは言及していません。ミッションとは、ある意味で事業領域を特定することですので、狭すぎず広すぎず、自社の得意とする領域を活かした成長の機会をも示すことが良いのかもしれませんね。
適切なミッションとは、将来を含めた事業定義に大きく関係してきます。つまり、どこまでが自分たちのビジネスであり、そうでないかを明確に示すことができます。プロダクトやサービスが変化しても、顧客が求める価値の本質は相対的に大きく変わることはありませんよね。顧客価値をベースとしたミッションを適切に定義することによって、意味のない多角化や企業買収をせずに済むとともに、ビジネスの成長とさらなる顧客価値の改善に対して何ができるのかを考えさせてくれます(図9)。