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経営変革の「思想」と「実装」

なぜLIXILは「構造的無能化」に陥らなかったのか──変革支援者の存在、顧客視点での断片化の回避とは

ゲスト:株式会社LIXIL 安井卓氏、芦村学氏 クアルトリクス合同会社 増田泰彦氏【後編】

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 本記事の前編では、埼玉大学の宇田川元一准教授とLIXILの安井卓氏(常務役員 Marketing部門 リーダー)、芦村学氏(マーケティング部門 カスタマーサービス統括部 サービス改革推進部 CX改善推進グループ グループリーダー)、同社にCX改善ツールを提供しサポートするクアルトリクスの増田泰彦氏(シニア カスタマーサクセス マネージャー)により、LIXILの全社戦略の転換に伴うCXの取り組みがどのように進んだかが語られた。後編では、「トップにより策定された戦略」に基づく「現場の自発的な行動」がいかに同社では可能になったのか。具体的な取り組みの振り返りしなら、そのポイントを聞いた。

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“大方針”が現場で理解された2つの理由

宇田川元一氏(以下、敬称略):CS(カスタマーサポート)への取り組みに対して問題意識を持っていた芦村さんにとっては、上から新たに下りてきた大方針は納得のいくものだったということでしたね。その方針に沿った具体策の1つとして、クアルトリクスというツールの導入もあったのだと思います。現場では、それがどう受け止められたのでしょうか。

芦村学氏(以下、敬称略):個人的には非常に理解しやすかったです。というのも、私たちの部門がマーケティング部門の傘下に入ってから、全社の方針がすごく明確に伝わってくるようになったんです。顧客起点で考えていくためにデータを活用し、お客さまに良い体験を提供し、長く関係性を維持することで「CLTV:Customer Lifetime Value(顧客生涯価値)」を最大化し、商品やサービスに対する信頼・愛着を測る指標である「NPS:Net Promoter Score(ネット・プロモーター・スコア)」を上げていくんだということで、とても分かりやすかったんですね。

 方針が浸透しやすかったもう1つの要因としては、当社はコロナ禍において働き方改革とともにDXが推進され、Zoomなどのデジタルコミュニケーションツールが早期に浸透したことが挙げられます。それによって、安井のような経営陣の声をみんなが直接聞けるようになったんです。以前であれば文字情報として伝わってきたり、上長経由で伝えられたりしていたことでも、安井から直接マーケティング部門全員へのメッセージとして話される機会が2週間に1回程度、今でもあります。

 そこで繰り返しCXについてぶれない方針が語られ、それを実現するためには、きちんと「お客さま視点」で、お客さまからの評価の「データ」に基づいて改善していこう、そのためにクアルトリクスのようなツールを活用するんだという説明が行われました。ですので、クアルトリクスの導入はとても理にかなったことだと感じましたし、クアルトリクスさんのサポートもあって、すごくスムーズに進みました。

宇田川:私も共同研究の一環でインタビューの機会をいただきましたが、アフターサービス部門はとても良い雰囲気で取り組まれていると感じました。

芦村:ただ、カスタマーエクスペリエンス活動(CX活動)に対して、全社で義務づけられているからやっているという捉え方も一部ではありました。そのようなケースでは、「CX活動は全てのベースになるもので、各部門の重点活動を推進するきっかけとなり、成果にもつながる」ということを、時間をかけてメリットとして感じてもらえるように環境を整えていきました。

 ただ、カスタマーエクスペリエンス活動(CX活動)に対して、全社で義務づけられているからやっているという捉え方も一部ではありました。そのような方々には、「CX活動は全てのベースになるもので、皆さんの部門の重点活動を推進するきっかけとなり、成果にもつながる」ということを、時間をかけてメリットとして感じてもらえるように環境を整えていきました。

 私たちもやりながら少しずつ学習し、徐々にそのメリットが理解されるようになりました。そこから、それぞれの部門の価値やその先のお客さまの満足につながるような工夫をしながら進めていき、最近になってようやく効果が見え始めてきました。

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現場が戦略を“自分ごと”にするための「変革支援者」の存在

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この記事の著者

やつづかえり(ヤツヅカエリ)

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