各国中央銀行も注目するデジタル通貨
ビットコインの時価総額は2016年7月14日現在、約1.1兆円となった。ビットコイン以外でも、イーサは約945億円となっている[1]。日本円のマネーストックは総額で940兆円[2]、米ドルは約1260兆円[3]なので、まだまだ中央銀行が発行するマネー(フィアット・マネー)に比べれば規模は小さいが、それでも世界中の人が1兆円もの価値をどこの国の通貨や実物資産でもないデジタル通貨の形で保有している事実は注目すべきだろう。最近、ブラジルでは金の取引量をビットコインの取引量が超えたというニュースもあった[4]。決済手段に加え、価値を貯蔵するための資産としても存在感が出てきている。
デジタル通貨については、近年各国の中央銀行もその存在に注目し、自らが発行する通貨や、金融システムにどのような変更が生じうるか、あるいは金融政策の効果にどのような影響があるかといった論点で詳細な研究を始めている。
例えば英国でポンドを発行するイングランド銀行は、現代の金融資産はデジタル記録の形態で存在しているため、分散型台帳(ブロックチェーン)が金融システムを広範囲にわたって変革する可能性があると指摘している。また、国際決済銀行(BIS)は、デジタル通貨のメリットとして、グローバルに展開できるものであること、既存の中央集権的な仕組みと比べて低コストに取引ができる場合があることなどを挙げている。その上で、ブロックチェーンがより幅広く使われるようになれば、決済を超えて金融市場やその他の金融システム全体に応用される可能性があるため、中央銀行が継続して動向を注視するよう求めている。
また、中央銀行自身が従来の紙幣や硬貨に代わり、ブロックチェーン技術を用いてデジタル通貨を発行するというアイデアについても議論が行われている。英国の研究者二人が、中央銀行がデジタル通貨を発行するための「RSCoin」という仕組みを提唱しており、イングランド銀行も検討しているとされている。