「偶然の出会いの場」を生み出すために必要な“余白”と“偶発性”
セッションの最後には、株式会社グランドレベルでディレクターを務める大西正紀氏も含め、パネルディスカッションが行われた。ひとつめのテーマは「偶然の出会いを促す『場のデザイン』の方法」について。
「偶然の出会いを促す『場のデザイン』の方法」について
大西(mosaki 代表 / 株式会社グランドレベル): 正直、わざわざデザインしてまで出会いを演出する必要があるのかと思ってしまう部分もあります。というより、偶然はデザインできるものではない、というのが本質ではないでしょうか。とにかく、人が集まりたくなる『場』を作っていくしかないのではないかと思います。ただ「パーソナル屋台」の活動を通して感じたのが、人は完成しきったコミュニティには集まりたがらないのではないかということ。余白やすきまがあることが、人が集まりたくなる『場』に共通していることかもしれません。
集まる人たちが目的意識を持ってしまうと、それはもう偶然の出会いではないですよね。だから仕掛ける側としては、イベント化させないことが大切なのではないでしょうか。告知を最小限にするとか、規模を大きくしすぎないといった工夫ができると思います。とはいえ、そもそも偶然の出会いを求める人が集まってくれなければ意味がないので、その線引きが難しいところです。
横石(& Co. 代表取締役): たしかに偶然をデザインしたらそれはもはや偶然ではないですよね。でも戦略的偶発性という考え方はできるんじゃないでしょうか。たとえば僕の場合、パーティで初対面の人と話すのがすごく苦手なんです。でもそこに共通のテーマがひとつでもあれば積極的に会話することができる。同じような興味・関心を持った出会うべき人同士が出会えるようなきっかけづくりが、戦略的偶発性につながるのではなかと思います。
小林(東京急行電鉄株式会社): 企業や行政といった大きな組織が偶然の出会いのために何ができるか考えてみると、それぞれが所有する空間をいかに使いやすくできるかだと思います。『8/』もそうですが、何かを仕掛けたいと思っている人たちが自由に創意工夫できるような空間の土壌を整備することができるといいのではないでしょうか。
「人が集う場を作るうえで課題に感じる点」について
続いて2つめのテーマとして。「人が集う場を作るうえで課題に感じる点」について議論された。
田中: 私はいろいろな人が自分の好きなことをしても許される環境が好きなんですね。多様性って言葉は“都合よく”使われることが多いですが、筋書き通りでないことや自分と違う価値観を許し合える、本当の意味で多様性が認められる場作りが必要だと感じています。ブランディングやコンセプトも重要かもしれませんが、そこからはずれたことが起こったときどうするか。そこに課題と希望があるのではないでしょうか。
大西: 日本ではなんでもかんでも制限する風潮がある気がします。公園や集会所の利用規則にも“してはいけないこと”が書いてある。一方で、海外に目を向けると“してもいいこと”が書いてあることが多いんです。これなら、能動的に場を使えるようになるはず。集まる人が自発的に動けるように、補助線の引き方にも工夫が必要だと思います。
横石: 自分の周囲以外の世の中を知るきっかけとして『場』をつかった戦略的偶発性をデザインしたいです。というのも、音楽や映画の趣味と同じで、たいていの人は自分の好きなジャンルの情報しか得ようとしない。それを超えたところに真の偶然の出会いがあると思います。
小林: 公有地を使って何か新しいことをしようとすると、必ず多方面からダメ出しが入ります。リスクや責任を負いたくないという構造はまだまだ根強いんです。だから、公有地を管理する側に、リスクを取ることができる、思いの強い人がいることが重要なのではないでしょうか。
偶然を意図的にデザインすることのジレンマ、公有地の活用に立ちはだかる障壁など、人々に偶然の出会いを与える場作りが抱える課題は多い。しかし、イベントの開催や「パーソナル屋台」といった、小さな組織や個人での活動が公共の場をつくるきっかけになるというのは大きな希望ではないか。多くの人々が偶然出会い交流し、イノベーションを生み出す土壌づくりのために、創意工夫がしやすい余白のある空間づくりや、時代にあった制度の整備が求められるだろう。
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