佐宗邦威氏「人間の誰もがクリエイティブであり、デザイン思考は、自らがイメージするものを具現化する力を解き放つ」
続いて佐宗邦威氏が登壇。現在、株式会社biotopeを立ち上げ、老舗企業から大企業の研究所まで様々なビジネスの現場でデザイン思考を用いたイノベーションの支援活動を行っているが、もとは法学部出身でデータドリブンマーケターという経歴からも伺えるように「論理派」「左脳派」だったという。
しかし、そんな佐宗氏が、自らのクリエイティビティについて“気づき”を得た3つの経験がある。1つは、絵を描くワークショップで「物の見方を変えることでイメージ脳と言語脳を使い分けられる」ことに触れたこと。2つ目は連載で鼎談を行ったトム・ケリー氏の「創造性を妨げるもの。それは、自分がクリエイティブであることの恐れ」という言葉に刺激を受けたこと。そして3つ目は、かつてソニーに在籍していた頃にボトムアップで新規事業創出プラットフォームSony Seed Acceleration Programを立ち上げ、組織がボトムからのアプローチで動くきっかけを作ったことだ。
そうした経験を通じ、「人間の誰もがクリエイティブであり、デザイン思考は、自らがイメージするものを具現化する力を解き放つ“方法論”として有効」という確信に至った。さらにチクセントミハイ氏との鼎談で「創造的に生きることは人間が幸せに生きることに通じる」と実感し、「大人が創造的に生きることで子どもが持っている創造性を阻害することなく、誰もが自己効力感を得られる社会を創りたい」と考えるようになったという。
有機的な変化の“引き金”をひく、Organization Changeとは?
そして今年、シンギュラリティ大学での受講経験を得て、佐宗氏がテーマとして掲げているのが「デザイン、ビジネス、エンジニアリングの全てを包括した組織改革=Organization Change」だ。
株式会社biotopeは「共創型のイノベーションファーム」であり、様々な分野の人々による共創によって新しい気づきやアイデアを得る機会を提供している。デザインという手法を用い、分野・部門横断型でまったく新しい変革モデルを創出する支援をすることで「有機的な変化の引き金をひく」のが目的だ。佐宗氏はその仕組みを「漢方」になぞらえて説明する。既存の大きな仕組みの周縁に、新たなビジネス生態系を創り出し、徐々に浸透させていく。いわば一発逆転型というより、じわじわと文化・風土を変えることでイノベーティブな組織としようというわけだ。
クライアントとなる企業は、音楽や健康食品、メディア、ハイテク、嗜好品、文具など、幅広い分野に跨がり、商品開発やマーケティング、部門横断での共創型シナリオプランニングやビジョンデザインなど扱うテーマも多岐にわたっている。