デザイン思考は「プロセス」から「戦略」へ進化する――「チームビルディング」と「組織文化の変革」
そうした活動を通じて、佐宗氏が手法として用いているのが「デザイン思考」である。佐宗氏の定義によると「非デザイナーが様々な人と共働し、ユニークな視点で課題を解決し、創造的に解決策を創る方法=創造的問題解決」というものだ。
そして、左脳右脳を統合して考えるビジュアルシンキングによる「統合思考法」、現場の生活者への共感を中心に異分野の人々が共創するための羅針盤としての「プロセス」、破壊と創造を短いスパンで繰り返し具現化していく「マインドセット」、そしてどこでもプロトタイプしたくなる「環境・仕組みづくり」がデザイン思考を実践するための4つの要素としている。
独立当初は、新規事業部、R&D部とプロダクトやサービスの開発案件が多かったものの、近年はCEOや経営企画と一緒に創造的な組織デザインや部門横断的統合テーマの戦略策定プロセスの支援などが増えてきた。こうした事象の裏には2つのビジネス現場のインサイトが見えるという。いずれも、組織の中で新たな未来像を持っている人が、「自分だけでなく周囲を巻き込みながら、顧客起点のフィードバックサイクルの中で自分の構想をブラッシュアップしつつ実現させたい」ということ、そしてもう1つは「自分たちらしいビジョンのデザインを部門・会社横断的に行うことで、変化が激しい環境に対応したい」ということである。つまり、組織内の顧客インサイトのフィードバックサイクルを早めることや、異分野の視点を統合した視点を作りたいというニーズ。これらは、いずれもサイロ化した組織、そして社会における、共創による統合が求められているというわけだ。
その背景として、佐宗氏はゲイリー・ハメル氏の著書『経営の未来』から引用し、「複雑系のマネジメントの時代」が到来していることを挙げる。つまり、変化が激しい時代に戦略などをコントロールできるはずがなく、環境をデザインしてその中から生まれるものをピックアップするという考え方だ。また、モノからコト、コトからプラットフォームのような「場」が求められる中、より多くのステークホルダーと共創するためのOSが必要になる。
佐宗氏はIBMやSAPなどが、全社レベルでユーザー体験改善のためにユーザー共創によるデザイン思考を導入したことに触れ、「プラットフォームを持ち、そこに新しい価値を乗せていきたい企業が、次々と分野を超えた共創環境に取り組んでいる」と解説した。
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