なぜ「イノベーション議論」は常に“噛み合わない”のか?
Biz/Zine関連のイベントやミートアップにご来場いただく方や著者さんと、イノベーションにおいて何が必要なのか、日本企業には何が足りないかという「イノベーション議論」を、仕事柄よく行います。そのイノベーション議論において、議論が“噛み合いない状況”を、頻繁に目撃します。一歩引いた立場でのその議論を見守ると、多くは2つの点で“大きな前提のズレ”が発生しています。
1つ目の前提のズレが、「イノベーションの種類」に関してのものです。「破壊的イノベーション」なのか、「持続的イノベーション」なのか、という大きなズレです。GoogleやAmazonなどの新規カテゴリーや産業自体を創出するような「破壊的イノベーション」なのか、カテゴリーエクステンションと呼ばれる既存の事業ラインの拡張のような「持続的イノベーション」なのか。まったく種類の異なる「イノベーション」を、同じイノベーションとして語れば、必要となるものが異なり、議論が噛み合わないのは当然です。
2つの前提のズレが、投資回収期間の違い。つまり、今現在の“メシの種”なのか、未来の主軸となる“メシの種”なのか。これも大きな前提のズレであり、投資回収の期間として想定している期間が違えば、必要な施策が異なることは当然です。
さて、本書はその「イノベーションの議論における大きな前提のズレ」に関して、どんな示唆をあたえてくれるのでしょうか。本書の主張はいたってシンプルです。ネタバレしすぎない程度に、詳細をみてきましょう。
多くの大手企業においては、経営企画部門や財務部門と経営陣、事業部門のトップにより、年次戦略会議が行われ、その場において、経営資源の配分が決定します。その際に、基準となるのが、投資ホライゾン(投資期間)です。
- ホライゾン1:翌会計年度の事業での投資回収
- ホライゾン2:2年から3年で投資回収
- ホライゾン3:3年から5年で投資回収
その上で、本書の主張はメインとなる図に集約されていますので、次項以降で概要をみていきましょう。