最高のイノベーションの起点は「技術か、人間か」――用途の向き不向きから考える「4つの起点」とは?
それではまず1つ目の課題として、雑多な情報の中からアイディアを見出す「0→1」という方法論はあるのだろうか。横田氏は「YES」と言い切り、「どのような思考プロセスとしてアイディアを生み出すか」を模式化したものを示した。
人がアイディアにアプローチするときに、①技術から直結すれば「この基礎技術で何か製品ができないか」と考え、②技術側から人を見た“市場”から考えれば「この市場が熱いようだから、新規事業を考えよう」となり、③人間側から技術側を見た“社会”から考えれば「こういう社会問題をどう解決すればいいか」という発想になり、④の人間側から直結して考えればマクロな視点から「あの人が困っていることを解決するにはどうしたらいいか」という問いになる。
それぞれがアプローチを図りながら、イノベーションを考えてきた。技術ならR&D系、市場なら経営企画系、社会ならシンクタンクやNPO、人間なら生活者インタビューやデザインリサーチ部門など、それぞれが得意な手法で活躍してきた。しかし、その状況について横田氏は、「それぞれの手法や専門家、組織は、あまり交わってこなかったのではないか?」という課題感を提示する。
それぞれの特徴を俯瞰すると、強み弱みや用途の向き・不向きなどが見えてくる。たとえば、技術起点は優位性の確保が強みながら、人が置き去りになる傾向があり、さらに当たれば大きいが打率は低くなりがち。また、市場起点なら事業性の見定めが早いが、抽象に陥りがちだ。社会起点なら社内外の大義名分としてメンバーのモチベーション維持がしやすいものの、そもそも課題が複雑で難解であり解決が難しい。そして人間起点なら、ユーザー目線で具体的でユニークなアイディアが生まれるが、優位性が担保できず事業化しにくい側面がある。
横田氏は「人の考えることなので、一長一短があり決して『統一理論』はない。状況に応じて多様な方法論を分解・統合して使いこなすことが大切なのではないか」と語る。それでは、どのようなアプローチがよいのだろうか。実際に各社でイノベーションに取り組むパネラーが登壇し、それぞれの経験を語った。その模様をほぼそのままお届けする。