“その場、その時”だけの地域創生にはない、本質的な地域創生の取り組みを目指して
まず、『DINING OUT』に関して。第1回は、2012年10月に新潟県佐渡市で開催、その後北海道、静岡、徳島、広島、佐賀、宮城、大分、沖縄などで開催されており、今回で12回目を迎えた。
この『DINING OUT』が、いかに特徴的な地域創生なのか。そこには6つの特徴があるという。
1つ目は、その土地を象徴する特別な場所がプレミアムなレストランの会場になること。DINING OUT開催前に、地域内外に知られている場所にかぎらず、複数ある開催候補地の良さを判断して候補地内の特定の場所が選定されるという。開催後、新たな観光地として、観光資源化した開催場所もあるという。
2つ目は、世界中から注目されるトップシェフをキャスティングすること。トップシェフの手により、地元の食材の新たな魅力を新たな調理法で「オリジナルメニュー」として提供。地元の料理人に全てのレシピを公開して、開催後の新たな郷土料理を生み出すことを目的にしているという。
3つ目は、地域の魅力を最大限表現する総合演出によるおもてなし。開催地固有の伝統芸能や、その伝統芸能を現代風にアレンジする表現者を招聘し、レストランに訪れる来場者へ地域の魅力を伝えている。毎回、その企画内容は参加者には当日まで秘密にするというこだわりようだ。
4つ目は、100名以上の地元スタッフと共に作り上げているという点。地元のスタッフと数度のワークショップを重ねて、当日も、多くの地元スタッフにより運営される。そのノウハウは全て地元スタッフに公開され、DINING OUT開催以降、地元スタッフが自主的に地域活性化の取り組みを推進できるようにと意図されている。
5つ目は、10万円以上するプランが発売後数日で完売するという点。12回目の開催までに、高感度な客層がDINING OUTの理念に共感し、何度も参加する“リピーター”もいるようだ。
6つ目は、DINING OUTから派生したプロダクト開発だ。DINING OUTを機に発掘された食材による加工食品や、地場産業や伝統工芸とコラボレーションしたオリジナル商品の開発なども行われているという。
また、この6つの特徴の発展系として、開催地で実施された内容を東京で再現する『SPECIAL SHOWCASE』、世界へ発信する『JAPAN PRESENTATION』も行われている。これらの取り組みにより地方創生を実現しようとするのが、DINING OUTの特徴だ。
開催地「内子町」の魅力とは何か?
では、第12回開催地の愛媛県喜多郡内子町とはどんな町なのだろうか。
2017年8月現在の人口は16,926人の内子町。年間の観光客数は約120万人で、海外からの観光客数も増加しているが、県庁所在地の松山市まで車で1時間ぐらいということや、町内に宿泊施設や飲食店などが少ないことから、日帰りの観光客も多く、観光で訪れる人々の消費は、町外に分散するという課題を持つ。
歴史を振り返れば、和蝋燭(ろうそく)や石鹸、化粧品などに使用される、ハゼの実からとれる天然油脂「木蝋(もくろう)」の一大生産地として栄え、明治時代には海外輸出による外貨の獲得などで現在の礎になる町並みを形成する。その町並みは、昭和57年(1982年)に、四国で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定される。同時に商家町として発展し、職人が多く移り住み、落語や芝居などを楽しむ文化が醸成される。
大正5年(1916年)に大正天皇の即位を祝い創建され、100余年の歴史を持つ「内子座」は、香川県の「金丸座」、熊本県の「八千代座」と並ぶ日本でも指折りの芝居小屋だ。小屋は木造2階建て、芽葺き入母屋造り。昭和60年(1985年)に復元工事が完了し、現在も芸術文化活動の拠点として活用されている。第12回のDINING OUTは、この内子座からスタートした。