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共創し学習する新しい組織論

残業時間が減っても経営が変わらないのはなぜか──組織の「技術的問題」と「適応課題」

共創し学習する新しい組織論:(コラム第5回)

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 働き方の変革や企業のイノベーションは今日の日本企業の大きな課題である。だが、実際はどうだろうか。12月に開催されたBiz/Zine Dayの講演でも述べたが、私は一昨年、九州から東京に戻ってきて驚いたことがある。それは、おびただしい勉強会やワークショップが日々行われていること。そして、大手企業を中心に数多くの研修が行われていることである。無論、これらが悪いことではないが、一方で、日本の企業社会が大きな変革を求められているにも関わらず、現実の変化に乏しいのも事実である。我々は実は多くのことを学んでいるが、それを実践することができない。この知識と実践との間に横たわる大きなギャップこそが、真に我々がチャレンジすることなのではないだろうか。今回は複雑な問題に対して組織として変革を実践することができないのか、実践するためにはどうしたらよいのか、という点について考えていきたい。

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知識が行動に結びつかない「knowing-doing gap」はなぜ発生するのか?

 知識と行動の間に横たわるギャップの問題を組織論研究者のジェフリー・フェファーとロバート・サットンは、共著である『なぜ、わかっていても実行できないのか』の中で「knowing-doing gap」と呼んだ。彼らは知識と行動のギャップが発生する要因として、有言不実行の問題、前例主義の横行、恐怖政治、個人の能力にフォーカスした評価システム、社内の過剰な競争を挙げている。

タイトルなぜ、わかっていても実行できないのか 知識を行動に変えるマネジメント
(ジェフリー・フェファー ,‎ ロバート・I・サットン 著 / 日経新聞出版社・刊)

 それぞれ大きな問題で、どれも確かにknowing-doing gapにつながる問題であろう。ここから特に指摘しておきたいのは、大きく2つである。ひとつは、何もしなければ組織の問題は何も変わらないということである。失敗を避けたいというマインドセットが、行動を阻むのは残念なことである。もうひとつは、一人ひとりの能力が高ければ組織がうまくいくわけではないということである。知識があっても行動に移せない環境であれば個々の能力は生きない。

 しかし、実はこの個人のマインドセットと組織の環境は密接に絡んでいる。個人として行動に着手できないのは、組織の中で失敗とみなされる範囲が広いからであろう。何かをやろうとすると、それ自体をある種の反逆行為であるとみなされ報復を受ける。また、何かにチャレンジしたにも関わらず、それが誰にでも納得のいく成果をあげられない場合などは叱責されたり、陰口を言われたりするような場合には、行動が起きないのは当然である。だからといって何もしなければ何も変わらないのも事実である。この堂々巡りのような問題はどのように乗り越えることができるだろうか。

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この記事の著者

宇田川 元一(ウダガワ モトカズ)

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