「戦略研究の強化」という“諸先輩の思いを結実させた航空研究センター”──自衛隊員の考え方や行動の土台となる「ドクトリン」を開発
仲山進也氏(以下、敬称略):自衛隊にトラリーマンが?!と意外に感じる読者は多いと思います。まず、伊藤さんが何をなさっているのか、聞かせてください。
伊藤大輔氏(以下、敬称略):まず本業としましては、航空研究センターというところで航空自衛隊(以下、空自)に応用できそうな戦略や作戦を研究したり、「ドクトリン」の開発を行っています。
仲山:ドクトリンって何ですか?
伊藤:「ドクトリン」とは、法令や政府方針の範囲内で、よりよく任務を達成するために、我々空自隊員の考え方や行動の土台となる知的基盤のことです。
仲山:伊藤さんの今の業務は、自衛隊にもともとあった機能ではなく、新しく作られたものと聞いたのですが。
伊藤:市ヶ谷の航空幕僚監部に勤務していた頃、組織改編を担当する立場にいました。それまで10年ほど、「空自は研究機能が弱い。航空防衛力整備に貢献できて、教育にも直結できる、戦略や作戦、ドクトリンをしっかり考える部署が必要だ」と諸先輩が思い巡らせてきたことを基に、2014年、航空研究センターを新設することができました。
仲山:それまではなかったんですか。
伊藤:研究機能はあったのですが、いろんな組織に分散していました。それを一つの組織に集約して、かつ必要な機能を新たに増やしたのが、今の航空研究センターです。
仲山:何人くらいの組織ですか?
伊藤:今は50人くらいになりましたね。
仲山:そもそも、僕が伊藤さんと知り合いになったきっかけは、ベストセラー『最高の戦略教科書 孫子』を書かれた中国古典研究家、守屋淳さんなどを通じてですよね。Facebookでちょくちょく伊藤さんをお見かけするようになって。多分、お互いに「変わっている人がいるな」と思っていて(笑)。
伊藤:それが4、5年前でしたよね。
仲山:それでつい最近、伊藤さんが「孫子の兵法」を学べるゲームを自作しているのをFacebookの投稿で知って「面白そう」と思って、「お茶しながら、詳しく話を聞かせてもらえませんか」ってお願いして、お会いしたら話が盛り上がりました。
伊藤:だから、直接会うのは今日が2回目。
仲山:「あ、伊藤さん、明らかにトラリーマンのニオイがする」とわかりました(笑)。それで「トラリーマンの共通点」を確認したらだいたい当てはまっていたので、すぐ「このコーナーで対談しましょう」と(笑)。そもそも、このゲームを作るという発想はどこから? これは本業ですか?