考えるより触れる──まずはトライアルを通じてRPAの威力を体感せよ(ポイント1)
RPA導入における最大の魅力は何か。それは、低コスト、短期間で、局所的に小さくスタートさせることができるという導入ハードルの低さである。
ビジネスは年々「短サイクル化」している。顧客の嗜好は多様化し、技術は今までにないスピードで進化している。以前からあるレガシーな情報システムは、ERP(統合基幹情報システム)の登場でやや短サイクルにはなったものの、それでも導入までに1年半を要し、そこから7年ほど使用するのが通常だ。一方で、RPAは早いもので2~3週間という短期間で開発することができ、かつ、既存のシステムになんら改修を加える必要もない。一段階ずつ進めていくウォーターフォール型で構築するような従来のシステムと異なり、うまく行かなければ試行錯誤を繰り返しながらどんどん進化させていくアジャイル型で導入を進めることができる。
全社の業務改革を推進するにあたり、まずは業務をすべて標準化してからロボット化すべきだというのは理想だが、それでは「短サイクル化」の波に乗り遅れてしまう。半年、1年とかけて検討や分析を行っている間に、検討疲れで頓挫してしまう恐れもある。まずは早期に小さく取り入れてみて、RPAで何ができて何ができないのか、その手応えを感じてみることが重要である。
また、この「手応え」については、実際に日々業務を担当している現場の人たちにロボットの導入効果を実感させることがカギとなる。現場の担当者は総じて業務の変革やロボットの導入に対して心理的抵抗を感じていたり、その効果に懐疑的であったりすることが多い。まずはPoC(Proof Of Concept: 概念実証)を実施し、現場の実業務にRPAを組み込んで、ロボットを実際に触ってもらいながらその効果を体感してもらうことが、成功には不可欠である。
こうしてPoCを通してRPAの威力に触れ、その有効性を実感した現場の担当者は、徐々に導入の推進者に代わっていく。現場での自分たちの仕事にもっと活用できるのではないかという自発的な改善アイディアを出す、ロボット化するために業務のやり方を変えてみるといった意識変革が生まれるようになる。RPAの導入に際しては、経営層からのトップダウンがあってこそ従業員の理解を得やすいが、ボトムアップによる現場の理解と積極性も重要である。